夢をかなえるカメさん像に賽銭箱(右下)を寄贈した奈良県在住の上柿さん夫婦
奄美市笠利町用の笠利岬にある観光スポット「夢をかなえるカメさん」像前で20日、目の病を克服したことに感謝する賽銭(さいせん)箱が収められた。寄贈したのは奈良県天理市在住の上柿(うえがき)彰さん(74)で、2023年に同町で療養した際には、病気に打ち勝つことを願って毎日像を訪れた。病を乗り越えての感謝の印に「ささやかな恩返し。由緒ある場所で人の役に立てて光栄」と思いを語った。
上柿さんは23年11月に、突然目が動かなくなる異常に襲われ、その後、毛細血管が詰まる「脳血管疾患」の診断を受けた。医師はこのままでは失明の恐れがあるとして、食事と運動療法による治療を推奨。奈良県警時代に同僚だった同町手花部の橋田康夫さんに相談し、同12月に奄美大島での療養生活を始めた。
滞在中は、宿泊先のホテルから像までの約3㌔の道程を毎日歩いて通い、病が治るようにと手を合わせた。像のほか、蒲生神社や明神崎展望台へも足を運び、多い日は18㌔近く歩いた。そんな3か月が過ぎた翌年の2月20日、目は動いた。視力も徐々に回復し、医師からは完治と伝えられた。
賽銭箱は、像の回りに放置され雨ざらしになった小銭が気になり決めた。建立には管理者であるあまみ商工会が協力した。
贈呈式には、上柿さんと妻の裕子さん(72)が来島し、橋田さんや同商工会の歴代会長ら13人が出席した。式では神事が行われ、完成を祝う除幕式を実施。同商工会の有川貞好会長は「奄美と奈良県の関係も一層深まった」と感謝した。
74歳になった上柿さんは現在、裕子さんが経営する運送会社で元気に働いている。「当時はわらにもすがる思いだった。健康のありがたさを以前に増して実感している。本当に思い入れのある場所になった」と笑顔で話した。
夢をかなえるカメさん像は、古来より伝わる龍宮伝説を観光振興に役立てようと、2002年に笠利町商工会(当時)が建立。▽頭にさわると知恵を授かる▽カメに子どもを乗せると元気に育つ▽お腹にふれると子どもを授かる―などのご利益があるとされ、現在は奄美大島を代表するパワースポットとしても大勢の人が訪れている。

