ヒヨドリ食害深刻化

無残にも葉部が食害されたバレイショほ場とヒヨドリの群れ=23日、伊仙町佐弁のほ場

徳之島バレイショ
「小玉傾向化」被害を懸念

【徳之島】「かごしまブランド」産地の一つ徳之島地区のバレイショは、収穫・出荷の本格化に向けた生育最盛期にある。ところが、野鳥のヒヨドリの大群がほ場を襲い、葉部食害して肥大化を阻害する深刻な被害が拡大。13年ぶりの被害規模と見られ、生産者たちの涙ぐましい防鳥対策も「イタチごっこ」の状態。JAや町農政当局は光合成阻害、生育不良「小玉傾向化」による減産を懸念している。

JAあまみ徳之島・天城両事業本部園芸課、各町農政担当などによると、「ヒヨドリらしき食害」(相談)は12月中旬に伊仙町東部地区から始まった。バレイショ地上茎の葉柄だけを残して貪欲に食害される被害は、年明け以降に一気に拡大。森林や里山など樹木が隣接部のほ場を中心に23日現在、島内のほぼ全域で散発的被害を確認。各町農政当局などは被害状況の把握を急いでいる。

ヒヨドリ(ヒヨドリ科)は、日本では周年見られ、秋には国内の暖地へ数千羽単位で渡る群れも見られるという。徳之島地区では2012年にも大群が飛来して今回同様バレイショ葉の食害が深刻化している。翌13年には収穫直前の特産果樹タンカン園も襲われ、皮肉にも優良果実のみを穿孔(せんこう)食害して2~3割の減産被害をもたらしている。

被害が深刻なほ場の環境は、臆病なヒヨドリたちが瞬時に逃げ込める森林など樹木が近くにあることで共通している。天敵であるタカやハヤブサなどの猛きん類を恐れて樹木への逃げ込みを繰り返してはバレイショに群がり、葉をむさぼり食っている。生産農家たちは、キラキラ光る防鳥テープや案山子(かかし)などを設置し自助努力しているが、「まもなく慣れてしまい効果が薄れる」のが現状という。 

伊仙町喜念の生産者男性(73)は「私の畑は今回は軽微だが、全滅状態の畑もあり気の毒でならない。10数年前はキャベツ畑なども大きな被害を受けたようだ。一時的には防風林垣の樹木も逃げ場になっているようだ」とも。

公的研究機関の報告には、「フクロウなど天敵の模型を置くことで25~30%程度の被害軽減が見込める」など例も。だが、JAあまみ徳之島事業本部園芸課は「現段階ではイタチごっこで抜本対策がないのが現状」。生育面では「現在のところ病害の発生は少ないが、12月の干ばつ傾向に伴う発芽遅れに加えた今回の鳥害。小玉傾向による減産が懸念される」と頭を抱えている。

同JA両事業本部管内の今期「徳之島地域赤土新ばれいしょ春一番」共販は約460㌶・約7700㌧程度を見込む。合同出発式(伊仙町)は2月1日に計画している。