奄美大島での緑黄系ブドウの安定生産実現へ作成された栽培手引きに基づき初のシャインマスカット講習会が行われた(28日、奄美市名瀬小宿とみた農園)
2023年7月に収穫された池島修さん生産のシャインマスカット
県園芸振興協議会大島支部(事務局・大島支庁農政普及課)の果樹技術部会は28日、奄美市名瀬小宿の農園で「奄美版シャインマスカット栽培講習会」を初めて開いた。高品質のものは高値で販売されるなどブドウの中でも人気の高い品目。奄美大島での試作により連年収穫が可能なことが明らかになったと報告され、枝の伸長が早いことから、早期の棚整備をポイントとして挙げた。
講習会には43人が集まり、生産者や植栽予定者、関係行政機関のほか、奄美市農業青年クラブが現地巡回の一つとして参加した。事務局によると、同島では2021年度から生産農家による試作が始まり、23年以降、収穫に至っている。試作に取り組んでいるのは奄美市と瀬戸内町の5人の生産者。講習会は富田聖一さん(60)のビニール屋根掛けハウス(2・4㌃)内で行われたが、23年7月に収穫に成功した同町古志の池島修さん(68)も参加した。
講習会では作成した栽培手引き(奄美暫定版)を基に、同課技術普及係の松尾至身(てつみ)技術主幹が講師を務めた。ブドウは栽培技術が確立されている一方、落葉果樹のため冬場の低温確保が欠かせず、自発休眠覚醒に必要な7・2度以下の積算時間は368時間とされている。松尾主幹によると、これまでの試作によりこの環境でなくても連年収穫が可能なことが明らかになったほか、▽他の地域の無加温栽培より早い作型となり、収穫時期は7月中旬▽シャインマスカット本来の食味の基準である糖度18度以上は十分確保できる―を挙げた。池島さん、富田さんとも12月に植栽している。
作業の労働力については「3月下旬~5月までが超多忙な期間」として、タンカンなどかんきつとの組み合わせは「パッションフルーツよりもブドウの方が労働力の相性は優れている。秋以降の作業は必要ない」と説明。ブドウの中でも高値で販売できる品目だが、作業の進め方で適期を逃がすと商品性・収益性が著しく低下というリスクもある。松尾主幹は「決まったことを着実にきっちりやれる性格でない人には不向きな品目。しっかりと取り組むことで儲けが期待できる」と強調した。
先駆者として試作に取り組んでいる池島さんは「花の満開時期(4月頃)を見極めることが大事。その際に1回目のジベレリン処理(種を抜く)を行う。シャインマスカットはおいしいだけに実った時のうれしさは格別」、H型整枝に取り組む富田さんは「植えて1年半で収穫と早い。台風対策のためにもハウス天井を円形にした方が管理しやすい。とにかく枝の伸びが早いだけに、定植前の棚づくりが一番大事」とそれぞれの経験から栽培ポイントを述べた。
松尾主幹は「単なる興味本位ではなく、明確な根拠や強い動機が合致した場合のみ導入が望ましい。取り組み例がない『島のブドウ狩りには勝算』があるのではないか。観光農園としてのポテンシャルは十分」と語った。