実動訓練で和泊港に搬送した避難住民ら(28日、和泊町)
【沖永良部】他国から武力攻撃の可能性があると想定した国民保護共同実動・図上訓練が28日、県庁と和泊、知名両町であった。沖永良部2町で実動訓練が行われ、住民や入院患者らを島外へ避難させる手順を確認した。
避難を呼び掛ける防災無線を合図に、指定場所に集まった避難住民30人の受け付けを開始。バス2台を使って和泊港へ運んだ。
沖永良部徳洲会病院では、入院患者を島外避難させるため、救急車で航空自衛隊沖永良部島分屯基地へ搬送するまでの流れを確認した。自衛隊のヘリコプターによる患者搬送訓練は悪天候のため中止となった。
このほか、残留住民対応訓練も行われ、「島に残りたい」「薬を忘れたので家に戻りたい」と避難をためらう住民に対して、役場職員らが説得にあたった。
訓練に参加した知名町の青木経二さん(70)は「島外へ避難する訓練は初めてで緊張した。このような訓練があることを住民にもっと周知してほしい」と話した。
講評で知名町の今井力夫町長は「非常に臨場感があり、今後の良い指標になる訓練だった」とした上で、「有事の際、島内に2台しかない救急車を訓練通りに使えるか分からない。住民の集合場所に医師または看護師を配置した方が良いのではないか」と指摘した。
約50機関、200人が参加した図上訓練(28日、鹿児島県庁)
【鹿児島】県庁の災害対策本部室では、県危機管理課を中心に、船舶会社、航空会社、消防庁、自衛隊、海上保安庁、医療機関など関係機関による連絡調整会議と図上訓練があった。
リモートによるオンライン参加者も含めて約50機関、200人が参加。他国から武力攻撃を受ける可能性を想定し、奄美大島以南の島民約10万2000人を速やかに本土に避難させるために、船舶や航空機を活用した移送の手順などを確認した。
県が作成した避難計画によると、沖縄・奄美航路を運航するマリックスライン、マルエーフェリー、奄美海運のフェリーは、奄美大島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島の住民避難の専属輸送船となる。航空機も同様で、日本航空、日本エアコミューター、スカイマーク、Peach Aviation(ピーチ・アビエーション)の各社が分担して空輸を担当する。現時点では「航空便、船舶便の増便により、単純計算では14日程度で本土へ避難する輸送力が確保できる見込み」としている。
避難の順番としては、入院・施設入所者ら要配慮者を最優先し、続いて高校生以下と付添人及び65歳以上の高齢者、それ以外の全島民、自治体職員となっている。
会議では、フェリー運航会社から「沖永良部は和泊港のみの使用となっているが、状況によっては伊延港の併用も考えた方がいいのでは」、医療機関の受け入れ先となる鹿児島市立病院から「フェリーによっては搬送患者を車両スペースから客室への移動が困難な作りになっているものがある。事前の確認を」などの意見があった。県危機管理課は「更なる輸送力の拡充によって、避難日数、所要時間の短縮が可能になるよう、引き続き関係機関と連携して検討していきたい」としていた。