大島紬、若き後継者に期待

前田紬工芸での雇用が内定し、2度目の実習に挑む(左から)小口さん、岸さん

県委託事業 老舗が雇用内定の女性2人
インターン実習始まる

龍郷町にある本場大島紬老舗の前田紬工芸で、県外在住の20歳代女性2人の雇用が内定した。後継者の育成・確保を支援しようと県が委託事業で実施したインターンシップ(就業体験)の参加者で、2人は29日、2度目の実習のため奄美大島に来島。関係者が見守る中、締め加工に挑むなど、産地や職人の技に理解を深めていた。

訪れたのは神奈川県在住で社会人の岸涼香さん(23)、東京都在住で専門学校学生の小口恵泉(めぐみ)さん(20)。2人は共に締め機(ばた)や図案の工程での就業を前提に、昨年10月に行われた同社でのインターンシップに参加。熱意が評価され採用が決まった。

実習は31日までの3日間。初日は、奄美市名瀬の本場奄美大島紬協同組合を訪れ、実際に締め機を体験。指導員の伊勢勝義さん(70)に加工の基礎を教わった。

紬独特の繊細さに憧れて就業を決めたという岸さんは、「(締め機は)大変という印象だが、お客様に、きれい、着てみたいと言われるような作品がつくれるように頑張りたい」と意気込みを話した。高校時代に体験した泥染めが忘れられず職人の道を目指したという小口さんは「(内定に)びっくりした。自分が考えてつくった大島紬が届けられるような職人になりたい」と抱負を述べた。

若き後継者の誕生には、産地の期待も高い。指導にあたった伊勢さんは「締め加工は力仕事でもあり、女性の挑戦は珍しい。成長が楽しみ。頑張ってほしい」と激励。実習に立ち会った同組合の黒田康則理事長は「一歩ずつ成長し、いろんな人に話や伝えることのできる職人になってほしい」とエールを送っていた。

30、31日は雇用先の前田紬工芸で仕事を手伝うほか、住まい探しを見据えて移住者先輩との交流会にも参加する。岸さん今年4月、小口さんは2026年4月の就業を予定。当面は奄美大島伝統工芸産業支援事業・後継者育成事業を活用し、研修生として腕を磨いていく。

事業は県の伝統的工芸品総合対策事業の一環で、運営はニッポン手仕事図鑑(本社・東京)が手掛けた。30日は、同名瀬の田畑絹織物でも2度目のインターンシップを開始。雇用予定の女性2人が実習に臨む。