クロウサギ海岸部に生息拡大か?

海岸部にも生息拡大か?―。徳之島町金見崎海岸の浜辺の複数箇所見つかったアマミノクロウサギのふん(30日)

アダン密林へクロウサギの〝獣道〟とみられる痕跡

稀有(けう)な海浜環境が広がる徳之島町金見崎海岸一帯(★印はクロウサギふんの確認エリア)

ふん確認、専門家ら重大関心
徳之島町金見崎海岸

 【徳之島】世界自然遺産の島・徳之島の東北端、徳之島町金見崎(かなみざき)海岸の浜辺で、国指定特別天然記念物のアマミノクロウサギのふんが確認された。昨年はアダンの密林と砂浜の間で幼獣1匹の死骸が見つかっていたことも判明。前代未聞の「海岸部への生息域拡大」も予想され、長年クロウサギの生態研究を続ける写真家も急きょ現地を確認し、生態確認を検討するなど重視している。

 金見崎海岸は山手(森林)と分断するように挟まった金見集落エリアをも包含した奄美群島国立公園(第3種特別地域)。金見崎灯台からアダンの密林を縫って遊歩道を下ると、白砂とメランジ堆積(たいせき)岩群、サンゴ環礁、紺ぺきの海とのコントラストが美しい通称「真崎(まさき)浜」が開ける。国指定天然記念物のオカヤドカリの大群の〝一斉産卵〟でもおなじみの海岸だ。

 絶え間ない潮騒とともに海風が吹き抜ける同海岸で「まさか?」の発見をしたのは天城町与名間、「スピリチュアル観光ツアー」代表の宮田真誠(まこと)さん(51)。「最初に見つけたのは昨年12月のガイド中のこと。波打ち際にわずか数個だけだったため、他から流れ着いたのか?と思っていた」。そして今月中旬の再訪時、綿密に踏査すると、満潮時は海水で隔てられる岩礁の頂部など複数箇所で大量のふんを確認。砂上にはクロウサギの足跡状の痕跡も確認した。

 「ウサギ類は水を怖がると思っていたが、好奇心が強く、躊躇(ちゅうちょ)することなく海辺の暮らしもするのでは?」と確信。同海岸では2月2日、数百人規模による海岸クリーン作戦も計画されているため、「エリア保護のため一般周知も必要」と感じたという。

 連絡を受けた写真家浜田太氏(71)=奄美市=も現場に駆けつけ、排せつ後1週間程度と思われるふんとともにアダン密林への獣道と見られる痕跡も確認した。「約20年前、ヤドカリの撮影で一晩過ごしたことがあるが、当時その痕跡はなかった。長年森林での生活を追ってきたが〝海のクロウサギ〟の生活も追ってみたい」。森林部が海岸に連なった奄美大島の和瀬・青久両海岸(奄美市住用町)でもふんの確認例があるが、画像検証には至ってないという。「クロウサギなど希少生物と人間の生活エリアが近いのが徳之島の特徴。画像による検証も必要」とも強調する。

 地元・金見地区の自然保護や地域おこし活動を続ける一般社団法人あまちゃんクラブ代表理事の元田浩三さん(70)は「昨年同海岸でクロウサギの子どもが死んでいた。クロウサギは山奥で生活するもの。まさか浜には?との思い込みがあった」。幼獣の死骸に加えた、ふんの確認に「(町条例に沿った)犬猫の飼養管理の徹底なども呼び掛けたい」と話した。