奄美大島から沖縄へ転院搬送

介護タクシーからMESHの医療用飛行機へ移送される里さん(3日、奄美空港)

70代女性をリハ専門病院へ
メッシュ・サポート 医療用飛行機使い

 沖縄県や奄美群島の離島地域で、医療用飛行機を使い患者の医療搬送を行っているNPO法人メッシュ・サポート=MESH(塚本裕樹理事長)は3日、奄美市名瀬の県立大島病院から沖縄本島のリハビリ専門病院への転院搬送を行った。奄美大島から沖縄へ患者を搬送するのは初めて。沖縄・那覇~奄美空港間を往復し支援を行った塚本理事長は「離島だからという理由で、医療を諦めている人は大勢いる。広く活動を知ってもらい、多くの人に支えてもらいたい」と話した。

 MESHは、離島やへき地の医療格差の改善を目的に2007年に設立。現在は、奄美大島から沖縄県与那国島までを対象に、入院先から居住する島へ戻す「帰島搬送」、民間機での搬送が難しい患者を運ぶ「準救急搬送」、「医師派遣」を手掛け、24年末までに累計2920件の救命活動に取り組んでいる。

 奄美群島における医療用飛行機での患者搬送は、地理的に近い与論島、沖永良部島を中心に、帰島搬送33件、準救急搬送43件を行ってきた。

 この日は、24年10月に奄美市笠利町で交通事故に遭い、県立大島病院に入院していた里牧子さん(72)を、沖縄市の医療法人タピック沖縄リハビリテーションセンター病院へ転院搬送(準救急搬送)した。

 里さんは事故で左足を開放骨折、骨盤や肋骨(ろっこつ)も骨折した。脳挫傷や外傷性くも膜下出血の症状もあった。現在は会話ができるまでに回復したものの、「脳障害後のリハビリ」を必要とする状態。

 沖縄県内に在住している娘のジョージ絵利奈さん(40)が自ら転院先を探して同病院と交渉し、最終的に1月22日に転院が決まったという。

 民間機での移送も考慮したが、沖永良部空港での乗り継ぎがあるため断念。MESHの支援を仰いだ。

 移送転院の決定を受け絵利奈さんは「事故当日、沖縄から病院に駆け付け、その後毎日面会した。以来約3か月、母の病状を日記に記し涙を流す日々だった。今日を迎え、安堵(あんど)している」と晴れやかに語った。

 奄美空港で母親を見送った長男の里建一郎さん(43)と次男の里博嗣さん(38)も「母が孫のそばでリハビリできることがうれしい。島の医療の状況は知っていた。私たち家族の経験を通して、MESHの活動を知るきっかけとしてほしい」と話した。

 医療用飛行機は午前11時頃、奄美空港を離陸し、約1時間半のフライトを経て那覇空港に到着。MESHの搬送車両に乗り換え、約1時間かけて転院先の病院に着いた。

※記事は、「離島の医療状況とMESHの活動を広く知ってほしい」という里さん家族の希望もあり、実名で報道しています。