徳之島固有種「タニムラアオイ」

ひっそりと可憐な花びらを広げた徳之島固有種「タニムラアオイ」。一方では深刻な懸念も=8日、天城町内

自生ポイント特定用とみられるビニールテープ

ひそかに可憐に…
一方で懸念も

【徳之島】強い寒気の流れ込みで南国・徳之島でも8日午前8時過ぎには最低気温8・1度を観測した(気象庁アメダス・伊仙)。その冷え込みにも負けず世界自然遺産エリアに連なる渓谷の森では徳之島固有種の「タニムラアオイ」(別名・タニムラカンアオイ)がひっそりと可憐(かれん)な白い花びらを広げていた。ところが一方では、その極めて限定的な自生ポイントに深刻な懸念が生じていた。

「タニムラアオイ」はウマノスズクサ科カンアオイ属の常緑多年草。カンアオイ属の仲間のうち「ハツシマカンアオイ」「トクノシマカンアオイ」を含む3種が徳之島固有種。タニムラアオイについては1994年に「新種」記載されたばかり。日本の同仲間では唯一純白の花(直径約2㌢)をつけ、その美しさから「白雪寒葵(カンアオイ)」とも称される。

自生エリアは極めて狭小で限定的。環境省のレッドリストには未記載だが、「絶滅危惧種ⅠA類に相当」との指摘も。盗掘・盗採圧力により年々減少傾向が否めないため、徳之島3町は採取禁止の保護条例を制定(2012年1月24日施行)している。

だが、極めて限定的ながら島内有数の自生地とみられる天城町内のスポットでは8日、目を凝らして付近を往復しないと確認できないほど株数が激減していた。例年、成熟株だと2、3個程度の可憐な花をつけていたが、かつて散見された成熟株は見つからず、花も弱小株にたった1個のみ。ポイントを囲うように2か所の木枝には〝ポイント・マーキング用〟とみられるピンクの蛍光カラーのビニールテープが結ばれていた。

農道から短時間で容易にアクセスできる環境のため近年、希少植物の自然探索コースとしてポピュラー化しつつあるとの懸念の声も聞かれていた。

徳之島エコツーリズム推進協議会、同ツアーガイド連絡協議会の関係者は「(登録・認定の)エコツアーガイドたちは、こうした重要ポイントへの案内はしないよう申し合わせている。関係行政サイドからの啓発も欲しい」と話す。