「シマ唄を伝えていかないといけない。謎の使命感が沸いた」と、話を交えて唄う楠田さん
ライブハウス会場は踊りの渦に
旧正月(1月29日)に合わせて31日、東京西早稲田のライブハウス「BLAH BLAH BLAH」で、楠田莉子さんが今年初めてのシマ唄ライブを行った。会場には関東周辺から多くの聴衆が訪れ、いつもはギターでポップスを歌う楠田さんの三味線とシマ唄に聴きほれていた。
楠田さんがライブハウスでシマ唄ライブをするのは初という。「ライブハウスを線引きしていた。絶対しないと思っていたことを今日はしている。優しく見守って」とあいさつ。この日、最初に「上がれ陽の春加那」を披露、続けて「朝花節」。シマグチの歌詞を説明しながら、「神様の引き合わせで出会っています。出会いを大事にして拝みます。英語の唄と思って聴いてください」と4節を紹介。「シマ唄は即興。会話の代わり」と「糸繰節」、「キョラギン」(南部式)、「豊年祭」(北部式)と説明しながら唄った。
幼い頃からシマ唄を習っていた楠田さんは、大会に参加するようになり、シマ唄に北と南があるのを知った。北にはない南のテンポの速い唄も唄いたいと自らも学んだという。「今はどちらも弾けるようになったけど、まだまだ難しくて勉強中」とシマ唄の説明に聴衆もうなずいていた。
似ている唄として「長雲節」と「曲がりょ高頂節」を紹介。「北と南では喉の使い方が違う」とシマ唄の奥深さも紹介。喜界島のことを唄った「キキャワンドマリ」、「花染め節」「雨ぐるみ節」と次々に唄い続けた。唄者の坪山豊さんと築地俊造さんの唄も自慢の喉で響かせ、「ワイド節」「六調」で会場は盛り上がった。
楠田さんが、今回ライブハウスでのシマ唄ライブを解禁させたのには理由があった。コロナ禍で島に戻った。ポップシンガーとしてギター一本でと頑張っていた矢先のこと。島にいる間に、地元の保育所や小学校でシマ唄体験を行った。いい環境で文化活動させてもらっているが驚いたことがあった。「子どもたちが『行きゅんにゃ加那節』を知らない。これはまずいと思った。伝えていかないといけない。謎の使命感が沸いた」。縛られていた思いが吹っ切れたという。「都会でも奄美を知ってもらわないといけない」。初のライブハウスでのシマ唄ライブとなった。楠田さんの新年が明けた。
(永二優子)