観光経営戦略セミナー

富裕層に向けた観光戦略を語る三科公孝氏(14日、ワークスタイルラボ)

「休館日」設け従業員満足度向上を
客室単価アップで売り上げも

 奄美大島雇用創造協議会(奄わーく)が主催する「2024年度観光経営戦略セミナー」(厚生労働省委託・地域雇用活性化推進事業)が14日から、奄美市名瀬のワークスタイルラボで始まった。19日までの4日間行われ、観光・宿泊業を中心に14社14人が、従業員満足度を向上させる働き方改革、生産性向上、インバウンドへの対応について先進例を基に学ぶ。

 1日目は、企業のコンサルティング業務や観光再生で実績のある㈱ノウハウバンク=山梨県=の三科公孝(みしな・ひろたか)代表(55)が、「観光業における働き方改革」と題し講話した。

 三科氏は、長期休暇を取ることが難しく離職率が高い宿泊業について、全国のホテルや旅館における成功事例を基に▽休館日の設定(離職率低下・若手人材の採用強化)▽従業員が複数の職種を並行してこなす多能工(マルチタスク)化▽管理職の負担を減らす勤怠管理システムの活用を提唱した。

 心配される売り上げについては、インバウンド需要などを想定し客室単価を上げることと強調。「全国の飲食業、宿泊業者で価格転嫁できない企業はつぶれている」などと話した。

 情報発信や集客の仕掛けについては、「メジャーになっていない観光地の掘り起こしに実績がある」として、富裕層に好んで利用されている旅行会社「ウォークジャパン」などを紹介した。

 奄美市で民泊施設を開業予定だという51歳の男性は「旅行代理店の活用など参考になった。内容を精査し、事業計画に落とし込みたい」と話した。

 古民家をリノベーションしたイベントスペースを運営しているという同市の桐山由季さん(56)は「セミナーに参加しインスピレーションが沸いた。奄美の自然・文化・食をキーワードにした企画を考えたい」と話した。

 三科氏は「富裕層のトレンドは、〝自然×冒険〟に加えコト消費(体験型観光)。奄美大島のポテンシャルは高い」と期待し、「為替の状況を見ても値上げを躊躇(ちゅうちょ)する必要はない。ただ、島内経済を活性化させるためには、得られた外貨を地域内循環させることが大事」と課題も示した。