パネルディスカッションでは大学や研究者、行政のパネリスト9人が意見を交わした
鹿児島大学国際島嶼(とうしょ)教育研究センター奄美分室の設置10周年を記念したシンポジウム「地域貢献を地域で考える」(同センター主催)が15日、奄美市名瀬のアマホームPLAZA(市民交流センター)であった。会場とオンライン合わせて約160人が参加し、基調講演やパネルディスカッションを実施。地域とともに歩んだ10年を振り返り、研究や情報還元など着実な成果を確かめ合った。
分室は、地域に密着した教育研究活動の推進を目的に2015年4月に設置。奄美群島をフィールドワークに専任教員や研究員が常駐し、研究推進や最新研究の地域還元などに努めてきた。
基調講演では、15年から7年間にわたり分室を担当した同センターの高宮広土教授が「分室の活動」と題し、市民講座「奄美分室で語りましょう」や研究成果を還元する「ブックレット」の発行といった取り組みの数々を振り返った。若手研究者3人は、分室、客員、鹿大とそれぞれ所属する立場で登壇し講演。研究成果のほか、「地域のつながりや窓口としての機能など、外の研究者が活用しやすい環境にある」などと分室の重要性なども訴えた。
山本雅史センター長が案内役を務めたパネルディスカッションでは、安田壮平奄美市長、松藤啓介県大島支庁長、岩井久理事ら9人が登壇し、分室に期待される取り組みをテーマに意見を出し合った。島でも要望の多い大学設置については、「(大学や自治体が連携する)共同キャンパスならできる。奄美は世界に島嶼を発信する拠点になれる」と岩井理事。「鹿大に来たのなら学生は(卒論やフィールドワークなど)一度は奄美を体験すべき。島に若者を呼び込む需要にもなる」などと意見を交換。一般からの質問では、島での高校生以下への講義や市民向け体験型観察会の開催を求める声なども上がった。
山本センター長は討論を終え、「奄美で歩むための土台づくりはできた。これから前へ一歩ずつ着実に進めたい」と総括。「県にある大学としては地域の研究責任を果たさないといけない。ともに力を合わせて次の10年に踏み出したい」と地域での前進を誓った。