高層ホテルの建設が計画されている奄美市笠利町節田の海沿いにある私有地
奄美市笠利町節田の県奄美パークに近い海沿いの私有地に、高層ホテルの建設が計画されている。地元の節田集落(長谷川雅啓区長、約300世帯)は会合を開き、中止を求め「反対」することを総意とした中、計画している企業側は当初打ち出していた来月着工を延期し、来月中に集落住民への説明会を開き理解を図る考えだ。
ホテル新築事業の事業主は奄美笠利町合同会社(共同企業)。同社から不動産の総合的な運用、運営、管理を委託されているのがアセットマネジメント(資産運用)会社の㈱アヴァルセック(東京・福岡に本社)。設計は㈱コイケデザインワークス(本社・東京)が行い、ホテル運営会社は㈱レンブラントホールディングス(本社・神奈川県)。設計会社の子会社の奄美事務所が奄美市名瀬にあり、地元の窓口となっている。
現在のところ示しているホテルの構造・規模は、鉄筋コンクリート造の地上12階建てで、建物最高高さは約40㍍。周辺の環境に配慮してコンクリートの打ちっぱなしではなく木材を取り入れるほか、敷地が道路より下がっているため県道から見た高さは30㍍程度になるという。客室は64室で、レストランや浴場、プールも備える。
節田集落の長谷川区長によると、昨年2月に企業側からの説明を受け、計画への賛否を確認しようと集落住民を対象としたアンケートを実施。180件の回答があり、結果は「賛成」19人、「どちらかというと賛成」35人、「どちらでもない」23人、「どちらかというと反対」42人、「反対」63人。「どちらかというと」を含めると6割近くが反対の意向。反対意見では「12階建てという高層はあり得ない。海が見えなくなる」「現状でも空港線の県道は交通量が多いのに、大規模なホテルが建つとさらに交通が増え事故の危険性が高まる」「ホテルで大量の水を使うと地元(集落)の供給に影響するのではないか」など。計画されている海岸はイザリ漁(大潮の干潮時に行う漁)の出発地となっていることから、漁への不安もあったという。
集落では今月10日、「大型ホテル建設計画に対する現状情報共有勉強会及び住民同士の意見交換」を開催。長谷川区長によると、この中で集落の総意として中止を求め計画に反対することを確認したという。建設予定地には3世帯が隣接しているが、うち1世帯の住民によると、企業側の関係者が訪問した今月5日、3世帯の連名で要望書を提出。現計画への反対を伝えた上で、▽建物の高さは13㍍以下にし、海洋汚染、光害、風害、日照阻害の環境問題への考慮▽地域社会や近隣住民、騒音、治安を考慮し、近隣の敷地内、海岸側も含めホテル客からプライバシーを守り安心できる生活の約束を書面で提示―など求めている。長谷川区長や近隣住民は「今月下旬には地鎮祭、来月には着工を打ち出すなどアンケート結果への所感、集落住民への十分な説明のないまま建設が進められようとしている」と憤る。
こうした声に対し企業側は「区長との打ち合わせにおいて、今後の近隣居住者への説明の仕方を相談させていただいたところ住民説明会を開くよう要請を受けている。当初予定していた今年3月からの着工を延期して住民への説明会を開催する予定」としている。設計の見直しについては「(懸念の声が多い水道水の大量使用による地域社会への影響につては)塩水処理できる井水設備の増築を検討している。このほか住民説明会で頂く意見についても出来得る対応を検討し、対処できることには対応し事業を進めたい」と説明。「地域住民と良好な関係を構築したい」との意向で、ホテル建設後は奄美市と協議して災害時の協定締結により渇水時などにおいて掘削した井水の地域での共同利用や震災、台風、津波などでの緊急避難所としてホテル使用により地域に貢献したいとしている。