高層ホテル計画に対する情報共有・意見交換を目的に「奄美が向かう未来を考える会」が主催した会合。多くの参加者があった(25日夜、節田小体育館)
島外企業による12階建ての高層ホテルが計画されている奄美市笠利町節田で25日夜、集落の住民有志が立ち上げた「奄美が向かう未来を考える会」(会長・長谷川雅啓区長)による経過説明や意見交換があった。世界自然遺産に登録された中、参加者から「山だけでなく海も守ってほしい」としてさまざま影響が懸念される計画への反対の声が上がる一方、集落として反対姿勢が示されているが「反対活動は節田集落の総意か疑問」との指摘もあった。
会場となった節田小学校体育館は開始の午後8時には準備された椅子がほぼ埋まり、後方には立ち見が出るほどで集落内外、町内外から多数の参加者であふれた。入り口では「大型ホテル建設中止を求める反対署名」用紙、同会が作成した高層ホテルのイメージ写真が配られた。
主催者を代表して考える会の長谷川会長は「集落常会や勉強会などでホテル計画について説明してきたが、情報がまだ十分に伝わっておらず集落内にも温度差がある」とあいさつし、開催趣旨を説明。さらに「計画地の海沿いはもともと国定公園で高さ制限などさまざまな規制があったが、世界自然遺産登録に伴う国立公園化により(同公園の)指定から外され、これにより守られるべきことが守られなくなった。今後、こうした計画が他の集落でも行われる可能性がある」と述べた後、2023年6月から8月にかけての企業(業者)説明で表面化した計画の経緯を時系列で報告した。
最新の情報では今月中旬、企業側から計画地での地鎮祭・着工延期が説明され、「3月5日午後7時から集落への説明を行う」との連絡があったという。計画に対し住民が、▽同じ水源を多量に利用することで集落生活や農業、公共施設などへの影響▽排水による海洋汚染の不安▽周辺道路は通学路にもなっており交通量が増すことで事故増や観光客増による治安悪化▽周辺土地の価格高騰により固定資産税の上昇で今後、持ち家が難しくなり賃貸物件の家賃も上昇懸念―などを理由に「反対」を表明した。
企業側は建設にあたり必要な行政手続きを進めているが、集落在住の奥輝人・市議会議長は「奄美市の景観計画では、高さ10㍍以上の建物は水道利用の届け出が必要となっている。笠利総合支所に確認したところ、きょう(25日)現在まだクリアされていない」として水道利用に関する手続きが終了していないとした。
参加者との意見交換もあり、両親が節田出身という名瀬在住の女性は「世界自然遺産って何?山だけでなく海も守るべき。計画地は奄美大島の空の玄関・空港に面しており島の入り口。世界自然遺産のプライドを持って絶対に阻止しなければならない」と訴えた。一方で祖母が在住しているという男性は計画に対し「反対ではない。区長は住民同士の勉強会や意見交換での意見から反対を集落の総意としているが、この会合には全員が出席していない。企業側の説明会を聞いてから反対の署名をすべき。説明を聞いて納得できた場合、署名を撤回できるのか」と主張した。これに対し長谷川会長(区長)は「勉強会・意見交換への出席者は50数人。総意という表現はふさわしくないかもしれないが、住民全体への十分な説明がないまま計画が進められることへの危機感があった」として理解を求めた。
現在のところ示しているホテルの構造・規模は、鉄筋コンクリート造りの地上12階建てで、建物最高高さは約40㍍だが、予定地がくぼんでいるため、県道部分からの高さは約30㍍になるという。