サシバ生態、全容解明へ

GPSタグを装着したサシバ(右は、日本鳥類保護連盟・藤井幹調査研究室室長)


血液採取も行われた。性別や病気の有無が3月中にも判明する(1日、宇検村湯湾)

日本鳥類保護連盟 宇検村でGPS調査
4日間かけ11羽に装着、放鳥

 奄美大島で越冬する絶滅危惧Ⅱ類の猛禽(もうきん)類サシバの生態解明に向けたGPS(全地球測位システム)調査が2月27日~3月2日、宇検村各地で行われた。公益財団法人日本鳥類保護連盟(東京都、小宮輝之会長)を中心とした調査チームが4日間かけ、11羽にGPS発信機を装着、放鳥した。今後、3月初めから4月にかけ北への移動ルートを追跡することで、謎の多いサシバの渡りや生態の一端が見えてくるという。 

 同連盟が奄美大島でサシバ調査を行うのは、24年2~3月、北部の奄美市笠利町や龍郷町で実施して以来2回目。複数の自然保護団体と共同で発足させた保全プロジェクトでクラウドファンディング(CF)を実施、今回は333人から340万円の寄付が集まった

 1日、湯湾・田検地区で行われた調査にはフィリピンの研究者を含む12人が参加。午前8時頃から2班に分かれ計6セットのわなを仕掛けた。

 27日は阿室地区で3羽、28日は名柄・部連地区で3羽をスムーズに捕獲したが、この日は苦戦。飛来するサシバを観察しながらわなの位置を変更するなどして、夕方になってようやく1羽の捕獲に成功した。

 個体はすぐに調査拠点に運ばれ、体長や体重を測定。血液サンプルを採取し、足環(あしわ)とGPS発信機(総重量12・4㌘)をつけ、捕獲地点で放鳥した。

 わなの仕掛けを担当した岩手大学農学部の東淳樹(あずま・あつき)博士によると「成鳥のメスタイプ」(サシバの性別は、遺伝子解析を経ないと確定しない)だといい、測定の結果、全長42・3㌢、体重515㌘、翼開長102・5㌢だった。

 血液サンプルは、京都大学野生動物研究センターの内藤アンネグレート素(もと)特任研究員が研究室に持ち帰り、遺伝子解析と貧血の有無を調べる成分検査を行う。結果は3月中に判明する予定。

 内藤さんは「個体の全てのゲノム情報を調べたい。10個体のサンプルがあれば、遺伝的な特徴が分かり、保全の指標となる。将来的には、中国ルート、台湾・韓国ルートの調査もできれば」と話した。

 同連盟の藤井幹(たかし)調査研究室室長は、宇検村での調査の意義について「北部での調査との比較が第一の目的となる。奄美大島の人にとってサシバは誰もが知っている存在。より深く知ることによって、守らなければならない存在であることを再認識してほしい。10月には、国際会議(10月25~26日開催「国際サシバサミットin宇検村」)が開かれ、諸外国の研究者が宇検村に集まる。サシバ保全の必要性を知るきっかけとしてもらいたい」と語った。

 保全プロジェクトおよび国際サシバサミットには、アジア猛禽類ネットワーク、日本自然保護協会、日本野鳥の会、奄美野鳥の会が参画している。