操業停止となっている喜界島の製糖工場・生和糖業。故障していた輸送船の運航再開で糖蜜回収のめどが立ち、操業停止期間は1週間余りで回避される見通しだ
製糖過程で生じる副産物である糖蜜保管用のタンクが満量になっている関係で、喜界島の製糖工場・生和糖業はサトウキビの搬入を受け入れることができず操業を停止している。長期化が懸念されていたが、回収用輸送船の運航が再開され、同島には22日に寄港する見込みで、前日の21日から操業を再開する。
糖蜜回収は、鹿児島、沖縄両県の製糖会社と取引する三昭㈱(本社・東京都千代田区)が、船会社との契約により輸送船2隻体制で行っている。輸送船(ケミカルタンカー)は「祐昭丸」(569㌧)と「民豊丸」(498㌧)で、このうち民豊丸が昨年12月に故障。1隻体制となったことで回収に支障が出、保管用タンクが満量の製糖工場は操業停止を余儀なくされている。
鹿児島県内で操業停止となったのは、種子島の新光糖業中種子工場(中種子町)と富国製糖奄美事業所(奄美市笠利町)。富国は今月8日に糖蜜が回収されたことで、同日から再開している。この二つの工場に続き喜界島の生和糖業が13日から操業停止。祐昭丸が同島に寄港する日程は4月4日で、それまで長期の操業停止が懸念されていたが、民豊丸の修理が終わり運航を再開。喜界島に寄港する見通しが立った。
生和糖業は「(民豊丸は)まず21日に徳之島に寄港し、喜界島には22日に寄港、その後23日に種子島に寄港すると聞いている。こちらが保管している糖蜜のうち300㌧が回収出荷される」と説明する。喜界島での次の回収は当初から予定されていた4月4日。「もっと多い量を回収してもらいたいが、22日に回収されたら、操業停止を繰り返すことなく、ぎりぎりで持ちこたえるのではないか」と見込む。
機械化によってサトウキビの大規模栽培(33㌶)に取り組む岩下雅一郎さん(72)は「製糖工場の操業停止は来期のキビ生産に響く。刈り取りができないだけに、株出し管理や春植えができない。現在までの収穫処理の進捗(しんちょく)は55%とまだ半分弱しかない」と影響を明かし、「糖蜜が回収できない事態は初めてのこと。今回のようなことが繰り返されないよう、2隻体制の維持が継続できる取り組みを進めるべきではないか」と訴える。輸送船の老朽化の指摘もあり、保管用タンクの増設を含めて安定して回収できる施策が求められそうだ。