スタートアップ事業で成果

県の支援プログラム 高齢者見守り実用化

 革新的なアイデアなどにより新しいビジネスを創り出し、短期間で成長をとげる企業スタートアップ。育成に向けて県は「かごしまスタートアップ成長支援プログラム」(CHEST(チェスト))を実施している。これまでの取り組みによりスタートアップの事業成長につながる成果が出ている。

 商工労働水産部産業立地課新産業創出室によると、スタートアップの状況に合わせた2種類のプログラムがある。ビジネスモデル確立のために取り組む実証事業をサポートすることで、県内におけるスタートアップの成長促進が目的のプログラムと、資金調達に向けたノウハウの提供や事業計画のブラッシュアップ(練り上げ)、企業とのマッチング支援など事業者の状況に合わせたサポートを行い、事業成長の加速を図るプログラム。200万円を上限とした実証支援事業費補助金もある。

 2024年度実績では、生成AIによる音声認識を活用した自動電話システムの開発など2件の実証事業を支援。今後の事業成長が期待されるスタートアップ3社に対し資金調達に関するノウハウの提供や企業等とのマッチング支援を行っているほか、採択事業者と支援機関などの交流会を計6回開催した。

 県のこれまでの取り組みの結果、ICTを活用した一人暮らしの高齢者を見守るサービスが実用化された。さらに宿泊施設の開業を目指す起業家が資金調達に成功するなどスタートアップの事業成長につながる成果が出ている。なお、このプログラムには奄美の企業も参加している。23年度のプログラム卒業生のコメントとして県が紹介しているのが、㈱アーダン代表取締役の西博顯氏。「会社の成長を目指して参加した」として、「課題への相談、メンター(指導・助言者)や参加者との交流を通じて、事業を推進するための心構えや知識を習得でき、貴重な体験ができた」としている。

 スタートアップ支援は、県の25年度当初予算案でも推進事業として1900万円を計上している。県内のスタートアップ企業数は民間調査では62社と全国の0・25%程度にとどまるなど、スタートアップが次々と生み出される状況には至っていない。そこで「起業に向けた機運醸成、環境整備、事業成長に必要な資金調達等を支援する必要がある」として、新規に▽支援機関との連携強化を図るための会議▽起業家同士の交流等を目的としたイベント―開催を計画している。