雨の中、鳴き声を記録する調査員(16日午前6時頃、奄美市名瀬)
奄美大島だけに生息するオオトラツグミ(幼鳥)=資料写真=
奄美大島だけに生息する国指定の天然記念物の野鳥オオトラツグミの一斉調査が16日早朝、奄美中央林道であった。島内外から約60人が参加し、鳴き声の聞き取りを実施。計64羽(速報値)の生息が確認され、主催するNPO法人奄美野鳥の会(永井弓子会長)は「近年は100羽前後を推移し、気象条件による変動(減少)はあるもの。(個体数の)回復傾向は続いていると思われる」としている。
オオトラツグミは奄美大島の照葉樹林内に生息。環境省レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)に分類されている。
この日の調査は奄美市名瀬から宇検村を通る奄美中央林道(約42㌔)と支線で実施。里林道では午前5時半に開始され、1、2人に分かれた参加者が往復4㌔を約1時間かけて移動。雨模様での調査となる中、「キュロロ」と鳴き声が聞こえる都度立ち止まり、方角や時刻などを記録した。
初参加の平川動物公園(鹿児島市)に勤める吉井みや子さん(55)は奄美野鳥の会の池畑望東久(もとひさ)さん(76)と調査。「園で傷病個体のオオトラツグミを飼育展示しており、大変愛らしい種。今回1羽を確認したが来年も調査に協力できれば」と話した。
奄美野鳥の会による一斉調査は1994年から、生息状況の把握による保護への活用を目的に、ボランティア参加者の協力を得ながら実施。繁殖期の3月頃に行い今年で32回目。昨年は過去最高となる117羽の生息を確認した。
調査結果について、永井会長(50)は「今年は新緑も遅く、季節変動の影響もあるのでは」と可能性を示し、今後は「中央林道の未整備部分での調査が困難など懸念事項はあるが、新たな調査方法の検討を含め、固有種を見守る活動を継続したい」と語った。