国土交通省は18日、2025年1月1日時点の地価公示を公表した。鹿児島県の平均変動率は住宅地が27年連続、商業地が34年連続の下落となった。下落率は住宅地が前年比0・1ポイント縮小し0・5%、商業地も0・3ポイント縮小の0・5%だった。奄美群島の自治体では、住宅地で龍郷町瀬留が上昇率で引き続き県内1位となった。好調な観光関連施設などから、リゾート地に近いことで地価は上昇が続いている。県内で変動率がプラスだったのは6市町(鹿児島市、西之表市、奄美市、姶良市、瀬戸内町、龍郷町)のみだが、前年より1市(西之表市)増えた。
地価公示は、地価公示法に基づき、同省土地鑑定委員会が毎年1回標準地を選定し、標準地の1平方㍍あたりの正常な価格を公示するもの。一般の土地の取引価格に指標を与えるとともに、公共事業用地の取得価格算定の基準とすることで適正な地価形成に役立てている。
県内では35市町の標準地点(奄美20地点)について調査。内訳は住宅地189地点(同17地点)、商業地92地点(同3地点)、工業地4地点で、住宅地は4地点、商業地は1地点減少した。
【住宅地】県全体の平均価格は4万4700円で、前年比1200円上昇。平均変動率はマイナス0・5%。上昇は67地点で前年比3地点増加、横ばいは25地点で同2地点増、下落は97地点で同8地点減だった。
最高価格は「鹿児島市西田2丁目16番27」の27万1000円で、同7000円上昇。鹿児島市中央駅西口でテナントビル開業、分譲マンション建設などでインフラ整備が進み、需要が増加したという。
変動率が最も高かったのは「龍郷町瀬留字玉里1501番」のプラス3・5%。価格は1万7800円で、同600円上昇した。
市町村の平均価格は鹿児島市の9万4800円が最も高く、次いで奄美市の8万4300円。以下、瀬戸内町3万3800円、徳之島町3万円など奄美の市町が上位にある。
奄美の住宅地17地点をみると、奄美大島の7地点が上昇した一方、喜界島、徳之島、沖永良部島の10地点は下落。最高価格は「奄美市名瀬伊津部町22番20」の11万6000円で、前年から2000円上昇。下落率が最も大きかったのは、「和泊町和泊小積原527番1」のマイナス2・3%で、価格は1万3000円(前年比300円下落)だった。
不動産鑑定士は、龍郷町について「奄美市のベットタウン的要素を持ち、また価格水準が奄美市に比べ比較的安価のため需要が堅調で、地価はプラス3・1%(前年プラス2・7%)と上昇傾向が続く」、奄美市については「名瀬の需要は安定しており、地価は上昇傾向にある。以前より区画整理地区の浦上・有屋地区の人気が高いが、大熊等の周辺においてもやや割高取引が散見される。旧名瀬市の市街地及びその周辺の平場の住宅地の需要は底堅い。上昇率はプラス1・6%(同プラス1・0%)と昨年より高くなった」と指摘する。
【商業地】県全体の平均価格は13万200円で、前年比900円上昇。平均変動率はマイナス0・5%。上昇は34地点で前年比6地点増、横ばいは10地点で同2地点減、下落は48地点で同3地点減。
市町村別の平均価格は、鹿児島市の29万9500円が最も高く、以下、奄美市の16万1000円、瀬戸内町6万3200円の順。最高価格は「鹿児島市東千石町13番34外」の116万円。再開発ビルの竣工、新型コロナ禍からの景況回復で人の流れが増加傾向にあり、需要は上向きという。
奄美の3地点の最高価格は「奄美市名瀬入舟町14番6外」の16万7000円で、前年から5000円上昇した。上昇率は前年県内1位だったが、今回1位となったのは「西之表市東町7059番1」(価格5万3400円)で、変動率はプラス4・1%。大規模公共工事(自衛隊基地整備)に伴う工事関係者の増加等で商況は良好としている。
奄美の他2地点は、「奄美市名瀬末広町10番25(中央通りアーケード街)」が15万5000円で横ばい、「瀬戸内町古仁屋大湊8番4」が6万3200円で、前年から300円上昇した。
不動産鑑定士は、奄美市について「アーケード商店街ではやや空き家、空き地が見られる。埋立地の利用が進み、特に港町、入舟町ではコロナ5類以降の観光回復の影響等から活気を取り戻し、需要は高い」、瀬戸内町については「5類移行後は観光客数も回復傾向にあり、宿泊施設の新規開業等が見られ、価格はプラス0・5%(前年プラス1・0%)と引き続き上昇傾向」と分析している。