天城町「コウモリイョー遺跡」

天城町「コウモリイョー遺跡」を第4次調査した東北大学・東北アジア研究センターの佐野勝宏教授(左)ら=19日、同町西阿木名

徳之島西部の海食崖の中腹にある「コウモリイョー遺跡」

9千~5千年前”陸・海の幸〟巧みに利用
新たな遺物で示唆
東北大・東北アジア研究センター調査

 【徳之島】天城町西阿木名にある縄文時代早期の重要遺跡「コウモリイョー遺跡」の第4次発掘調査を進めた東北大学・東北アジア研究センター(仙台市)の佐野勝宏教授(48)一行は18日、現地で調査概要を公開した。新たな遺物(土器や獣骨)で「9千~5千年前まで陸や海の幸を利用して人類が暮らし、奄美・沖縄地方、九州と交流」とも示唆。調査継続による旧石器人骨確認にも期待を示した。

 「コウモリイョー遺跡」(イョーは洞穴の意味)は、更新世に形成された徳之島西部の琉球石灰岩台地の海食崖段丘(標高106㍍)の中腹(比高差約50㍍)に位置する。北に約200㍍の地点には、約2万年前~約7千年前までの間の人類痕跡〝空白の1万年〟を埋めたと注目を集めた「下原(したばる)遺跡」が所在。同重要遺跡との関連性も注目されている。

 天城町教育委員会は2016年9月の試掘調査で面縄前庭式、曽畑式、爪形文土器をはじめ哺乳類や魚骨などを確認していた。東北大・同センターの佐野教授らは、下原洞穴遺跡同等に重視して22年3月から町教委の協力を得て発掘調査に着手。4年目の第4次調査は、同大大学院文学研究科や同大文学部生ら含め計6人が参加して今月7日に開始、19日が最終日となった。

 佐野教授によると、今回は、琉球石灰岩層に2か所のトレンチ(2×2㍍、深さ2㍍と70㌢)を設定。新たに、下原遺跡とも共通性のある南島爪形文土器(約7千年前)など土器類をはじめ、獣骨は1頭分相当ものイノシシ骨も確認。前回調査(上層部)までは貝類(カサガイやイモガイ)などが中心だったが、イノシシやアマミノクロウサギなど獣骨も増えた。

 背景として「サンゴ礁が発達してきた4千年前は貝殻が多い。小さな島でイノシシやクロウサギを含め〝陸・山の幸、海の幸〟と両方を食べて9千年前~5千年前までにわたって人口を維持した可能性も」。さらに「5千年前よりもっと古い完新世(約1万年前以降)の寒い時期すでに、奄美地方には人が在住。どんな生活をしていたのかも知りたい」。

 そして今後の期待は「旧石器時代の人骨と同石器の確認」。旧石器時代の石器(チャート製)の出土は「日本では徳之島が最南端(伊仙町のアマングスクとガラ竿遺跡)」。コウモリイョー遺跡からも「(奄美群島初の)旧石器人骨が見つかるかもしれない」と話した。