議会での承認で決定する県の観光振興基本方針案では奄美地域の施策方向として豊かな自然など地域資源の有効な活用を挙げている(シマオオタニワタリの渓流・参考写真)
県の「観光立県かごしま県民条例」に基づく観光振興基本方針は、現在の第3期は2024年度まで。第4期となる次期方針は開会中の県議会3月定例会に提案しており、承認により決定する。25~29年度まで5年間の方針案では最終の29年度に達成すべき数値目標を3期(4項目)より多い6項目としているほか、参考指標として推奨意向を追加している。
最終本会議は27日だが、当初予算関係と合わせて25日の本会議で採決される見通し。
基本方針案では、基本目標として「多彩な宝物が輝くテーマパーク『南の宝箱 鹿児島』~観光の『稼ぐ力』の向上~」を掲げている。具体的な施策展開は、デジタルプロモーションの積極的な展開など観光DX(デジタルトランスフォーメーション)の視点を取り込むとともに、SDGsの17の目標を踏まえ実現に努める。
観光の「稼ぐ力」を向上させ、観光振興による地域経済への波及効果を拡大するため、鹿児島県産業通関表等を基に県で推計した経済波及効果や、全国共通の基準による観光統計(観光庁「観光入込客推計」)の指標などを用いて、数値目標を設定している。
数値目標は6項目あり、▽経済波及効果=目標年の29年度は5400億円 参考23年度約2985億円▽観光消費額=同4100億円 同約2295億円▽延べ宿泊者数=同995万人泊 同約815万人泊▽うち外国人延べ宿泊者数=同155万人泊 同約36万人泊▽クルーズ船乗客数=同69万人 同約14万人▽再訪希望=同100% 同約88%。23年度と比較して外国人延べ宿泊者数は4・3倍、クルーズ船乗客数は4・9倍といずれも大きな伸びを目指す。
この数値目標に加えて、「本県への旅行を人に勧めたいと思うか」という推奨意向を観測する。参考として24年度は60%だったという。
方針案では、県内各地域の特性と施策の方向もまとめている。奄美の施策方向は次の通り。
多様で豊かな自然や、島々ごとに異なる個性的な伝統・文化等の地域資源を有効に活用。また、奄美ならではの海洋レクリエーションや自然観察など奄美らしい体験・滞在型観光プログラムづくりを促進するとともに、沖縄県との連携等の充実を図りながら、人と自然環境が共生する癒しあふれる質の高い観光地づくりを推進する。
世界自然遺産登録の効果を群島各島へ波及させるため、世界自然遺産奄美トレイルの活用、同じく世界自然遺産登録地である屋久島との連携及び地域の実情に応じたクルーズ船の誘致に取り組む。あわせて、オーバーツーリズムとならないよう、レスポンシブルツーリズム(責任ある観光)の考えに基づいた観光施策を展開する。
冬でも温暖な気候を生かしたスポーツ合宿、キャンプ等の誘致などを推進し、スポーツを通じた交流人口の拡大や地域活性化を図る。