備蓄米 奄美での流通不透明

コメの仕入れ価格高騰により小売スーパーでは販売面でさまざまな工夫を施している(グリーンストア入舟店で)

仕入れ価格 今年に入り3~4割上昇
小売、数制限や量切り替え

 主食コメの値段は奄美でも上昇が続いている。群島内のスーパーなどに広く販売している卸業者によると今年に入っての仕入れ価格は約3~4割も上昇、小売では販売数制限や量を5㌔から4㌔などに切り替える動きも出ている。高騰の抑制で期待されている政府備蓄米の奄美での流通については、まだ見通せない不透明な情勢だ。

 大型工場で玄米を精米し、群島内全域の小売スーパーや学校給食用としてコメを卸している有村商事㈱(本社・奄美市名瀬、有村修一社長)。リカー・ライス事業部によると、鹿児島本土や九州内などの契約集荷業者から仕入れており、「コシヒカリ」や「ヒノヒカリ」などの銘柄米のほか、独自のブレンド米で商標登録している「まっさっりょっと」、洗わずに炊ける無洗米(中身は銘柄米)など幅広く取り扱っている。

 担当(米価担当係長)の山下恭平さん(41)は「昨年秋の新米以降、1~2割程度毎月上がる状況で価格が推移していた。今年に入り一変し、大幅に仕入れ価格が上昇している」と話す。上昇要因の一つとして量が出回らない「コメ不足」があるが、「今の時期(3月)は決算期。ある程度出回ってもいい時期だが、そうならずに価格が上昇するのは本当に物(コメ)が少ないと考えるのが自然の流れ。島内スーパーでは逼迫(ひっぱく)までは達していないものの、明らかに販売量が少ない状況」と説明する。

 コメ不足、それによる仕入れ価格上昇は消費者が購入する小売に影響が及ぶ。一般的な購入商品である5㌔袋の場合、これまで3千円台だったが、4千円弱、銘柄によっては5千円超で販売されているものも。「お一人様2個まで」の販売数制限、5㌔売りでなく量の少ない4㌔売り、さらに販売スペースを縮小する小売店も出ている。奄美市名瀬で複数の店舗がある地場スーパー・グリーンストアは購入しやすい価格帯へ2㌔袋の商品も取り扱っているほか、主流になりつつある4㌔袋では通常の4千円台を特売で3千円台にするなど工夫している。

 コメの流通量の回復、それによる価格低下策として期待されているのが政府による備蓄米の放出だ。2月14日には最大21万㌧の放出が発表され、今月10~12日に初回入札が実施された。落札された14万1千㌧のうち9割以上(13万2千㌧)を全国農業協同組合連合会(JA全農)が確保し、残りも関連する全国のJA団体(鹿児島県の関係団体は含まれず)への引き渡しとなった。

 JA全農は25日の記者会見で落札した備蓄米がスーパーなどの店頭に本格的に並ぶのは、「来月以降になる」との見通しを示した。落札結果により先に備蓄米が出回るのはJA系列のスーパーとなる見通し。鹿児島県向けにも振り分けられ流通した場合、奄美群島内にあるAコープでも出回る可能性がある。

 初回で落札されなかった分を含めた7万㌧を対象とした2回目の入札は26日に開始され、28日まであり、落札業者への引き渡しは4月中旬とみられている。農林水産省農産局貿易業務課は契約数量など契約者の公表について「4月15日頃になるのではないか」としている。有村商事リカー・ライス事業部の山下さんは「2回目の入札結果を注視している。取引がある集荷業者の結果しだいだが、落札できなかった場合、弊社が備蓄米を仕入れることはできない」としており、現状では群島内で備蓄米が広く流通するか、流通するとした場合、時期はいつになるか見通せない。不透明な状況から、コメの価格が落ち着くかは全国の稲作産地の作況しだいで、「今年は豊作であってほしい」が切実な願いとなっている。