奄美倫理法人会の経営者モーニングセミナーで講話する㈱グレイ美術代表取締役の浜崎哲義氏
奄美倫理法人会(佐藤功久会長)の第1823回経営者モーニングセミナーが15日、奄美市名瀬の紬会館ビル4階にある同会事務所であった。「シマの宝」の演題で講師を務めたのは、㈱グレイ美術代表取締役で、出身地の大和村で「奄美温泉 大和 ハナハナビーチリゾート」を経営する浜崎哲義氏(67)。10代で上京後、郷土への思いとして強い奄美愛を持ち続け、25年間の構想を経て同リゾートを開設した経緯を説明し、地元にある資源を生かす方策として「周遊観光による地域活性化」を挙げた。
早朝6時からのセミナーには32社43人が出席。講師を紹介する佐藤会長あいさつに続き、前日来島した県倫理法人会の中江光秀会長も駆け付けてあいさつした。
講話で浜崎氏はまず生い立ちに触れた。「子どもたちをよろしく頼む」との言葉を母親に残して父親が33歳の若さで死去。4歳の時で父親の記憶は亡くなったことしかないという。母親は土木作業をしたり、大島紬の織工(おりこう)として働き、女手一つで苦労を重ねながら4人の子どもを育て上げた。そんな母親を前に「手に職を付けたら生きていける」として早くから、宮大工か調理師になることを夢見た。
地元の中学校卒業後、名瀬にあった工業系高校(電気科)に進学したが、「東京に出たい。働きたい」という気持ちが強く、都立高校の夜学に転校。宮大工の夢は映画会社・東宝の手伝いをする機会に恵まれたことで近付く。「デザインされたセットを見て鳥肌が立った。この仕事(映画撮影用のセットづくり)は面白いとのめり込んだ」。東宝に出入りする業者の社員として仕事ができるようになったのが、人生において1回目のターニングポイントと振り返った。
以降、20歳から25歳までチームリーダーを任せられるまでになった。25歳の時に起業し独立、現在のグレイ美術を立ち上げた。大手企業のCM用セット製作、世界的企業の大型店舗装飾、飲食店内装のディスプレイ(展示)などに関わり、現在に至っている。
次のターニングポイントとして挙げたのが、出身地・大和村の伊集院幼村長との出会い。「25年前、仕事で奄美に入った際、笠利町用安で撮影していたスタッフが『奄美って素晴らしい』と感動した。これだと思った。シマの宝である豊かな自然や文化を生かす仕事がしたい。東京で取り組んできたことを地元に還元する形で、郷土のために郷土で事業を起こしたいと考えた。民間企業として役立ちたい。そんな思いは村長との出会いにより、やり遂げたいという使命感に変わった」。村と立地協定を締結し、天然温泉があるハナハナビーチリゾートを開設し、今春1周年を迎えた。
浜崎氏は「人間には平等にチャンスがある。郷土に対する強い思いをしっかり受け止めていただいた伊集院村長には感謝しかない。先人が守り育んできた身近にあるシマの宝は、観光客にとって新鮮に感じる資源。観光客の皆さんを1か所にとどめるのではなく、島内全域に足を運んでもらう周遊観光を促進したい。来島する観光客もより楽しくなる。ウィンウィンの関係に基づき、各業者が観光客を紹介し合うようになれば、観光産業がさらに活性化するのではないか」と述べた。