瀬戸内町清水公園内にある総合体育館。正面入り口を取り囲むようにソテツが植栽されており、健全な葉が残る貴重な観賞スポットとなっている
瀬戸内町の清水公園内にある総合体育館には、正面入り口を取り囲むようにソテツが植栽されている。整備当初に植栽されたもので100本近くあり、奄美大島では北部を中心に外来カイガラムシ(和名ソテツシロカイガラムシ)による被害が拡大し壊滅状態にある中、青々とした葉をたくわえ貴重な観賞スポットだ。
管理する町教育委員会社会教育課によると、総合体育館は1986(昭和61)年頃に整備されたが、それより1年前に陸上競技用のグラウンドが整備された。南の島を象徴する植物であるソテツは体育館より前にグラウンドと合わせての植栽とみられるという。40年が経過したことになる。
体育館内には事務所があるが、会計年度任用職員として町が採用した4人が交互に常駐し管理業務に携わっており、他にも1人が外勤により公園内のごみを回収するなど美化を保っている。体育館正面のソテツは均等の距離を保って整然と植栽され、中には複数の株が重なり、幹が大きく成長した見ごたえのあるソテツも残る。
管理を担当する職員によると、ソテツについては年2回葉の剪定(せんてい)作業を行っているという。1回目が5~6月の新芽が出そろった頃。夏を前に古い葉を切り落としている。2回目は正月時期。長く伸びた葉が垂れた状態となり、「ソテツがある入り口を通り体育館を利用する子どもたちの安全面を考慮して葉を切除している」と説明する。
他の地域に比べてそれほど多くないものの、公園がある清水集落も葉が黄色く枯れたソテツを目にする。管理する職員は「昨年の新芽の時期、数本に被害が確認された。全ての葉を切った。被害ソテツは現在も幹だけ残っているが、幸いにも被害が広がらなかった。しっかりと管理して何とかソテツを残していきたい」と語った。薬剤の散布については町農林課が行っているという。
体育館は土日を中心にスポーツを楽しむ多くの町民でにぎわう。害虫被害のない健全なソテツが出入り口で見守る環境が現在のところ保たれている。
外来カイガラムシ(ソテツシロカイガラムシ)によるソテツ被害について、県は市町村などの報告に基づく被害発生状況をホームページで公表している。更新された今年2月末現在では、奄美大島内だけでなく加計呂麻、喜界と3島6市町村に及び、他島への広がりが懸念されている。
初確認された2022年11月以降の累計本数(道路、公園、学校、店舗、公共施設、緑地帯など)を市町村別にみると、名瀬地区や笠利地区で被害が目立つ奄美市が最も多く5571本で、全体の85・09%と9割近くを占める。次いで龍郷町(481本)、大和村(437本)、瀬戸内町(34本)、宇検村(15本)の順で、24年3月末では発生がなかった喜界町でも9本の被害が確認された。瀬戸内町の本数には今年に入り報告の加計呂麻島の被害(7本)も含まれている。
市町村別被害を24年3月末現在と比較すると、3倍(2081本→6547本)に拡大しており、中でも奄美市は4・7倍と大幅に増えている。奄美市の名瀬・笠利、龍郷町には群生地があるが、壊滅状態にあり、北部の被害は回復の見込めない深刻な事態となっている。
森林にある被害面積(黄変や枯死した面積)もまとめている。今年2月現在260㌶で、市町村別は奄美市139㌶、龍郷町67㌶、大和村37㌶、瀬戸内町16㌶、宇検村1㌶。これも市町村等からの報告で、目視による推定被害としている。
県や市町村は対策の周知を図っている。防除方法では、▽カイガラムシの付いた葉は切除し、被害葉が少ない場合は焼却するか、ビニール袋に入れてごみに出す。被害葉が多い場合は、葉を現場で集積し、葉が露出しないようシートなどで全体を覆う▽葉の処分後はソテツ全体に薬剤を散布(主な登録薬剤はマツグリーン液剤2など)。その後もこまめに観察し、再発生したら追加散布を行う―を挙げている。