プロランナー、川内優輝さん 初の奄美合宿終える

8日間の奄美大島合宿を終えた川内優輝さん(17日、奄美市名瀬のホテルビッグマリン奄美)

「走ることを楽しんで」

 1年間に10回以上のフルマラソンを走り、「最強の市民ランナー」と称されるプロランナー、川内優輝さん(38)=あいおいニッセイ同和損保=が17日、奄美大島での8日間の合宿を終えインタビューに応じた。川内さんは「名瀬運動公園のクロスカントリーコース、龍郷町のロードコース、ホテルの酸素カプセルやジムなど練習環境は充実していた。合宿地としては申し分ない。来年も来る」と絶賛した。

 2018年4月16日、日本マラソン界に快挙達成のニュースが飛び込んだ。この日開催されたアメリカ「ボストンマラソン」で、川内さん(当時31歳)が、気温3度、向かい風、降雨の悪条件の中、大逆転の末の劇的勝利をつかんだのだ。

 世界で最も著名なマラソンの一つに数えられるボストンでの優勝は、瀬古俊彦さん以来31年ぶりの快挙。日本のみならず世界中が湧き立った。

 川内さんはボストンでのレースを、「WMM(ワールドマラソンメジャーズ)優勝のインパクトは想像以上だった。日本以上に世界での反響が大きく、瀬古さんから『ケニアの選手で川内の名を知らない人はいない』とまで言われた」と振り返った。

 翌19年プロ転向。その後もハイペースでフルマラソンやハーフマラソンに挑戦し続けた川内さん。ひたむきに走る姿は常に感動を呼んできた。

 昨年、左臀部(でんぶ)を故障し、今回の合宿はリハビリを兼ねたもの。同じマラソン選手で、奄美合宿を何度も経験したことのあった妻・侑子さん(39)=所属・同=の勧めで初めて奄美大島を訪れたという。長男・渉夢(あゆむ)ちゃん(2)を伴った侑子さんは、練習のサポートを務めた。

 「僕にとってのマラソンは苦行ではない。レース前にタイムを求め追い詰める時と、JOG(ゆっくりしたペースで走るトレーニング)のメリハリをつけている」と川内さん。

 合宿中もロングJOGで大和村の宮古崎を訪れるなど、独自の練習法を貫いたという。「風に揺れるササ原が印象的だった」と話し、「鶏飯は毎日食べた。マグロもトビンニャ(マガキガイ)もおいしかった。16日は大型客船を見送るシマの踊りを楽しんだ」と饒舌(じょうぜつ)に語った。

 奄美の子どもたちに向け、「時にはコースから離れ、初めての道を走ることで練習は楽しくなる。強い市民ランナーはみんな楽しみながら走っている。マラソンを楽しんでほしい」と話した。

 次の目標は20日の「かすみがうらマラソン」(茨城県)、5月4日の「バンクーバーマラソン」(カナダ)。その後も5月末まで毎週のようにレースに出場するという。

 川内さんは「今回の合宿で夏に向けての暑熱順化(しょねつじゅんか)(暑さに慣れるための練習)ができた。レースをこなしながら、7月のゴールドコーストマラソン(オーストラリア)で2時間10分台を出すことがMGC(マラソングランドスラム)につながる。期待してください」と締めくくった。