20日に開所する「アマミノクロウサギミュージアムQuruGuru」
昼夜逆転の「よるにわ」で飼育されているケンタ(大和村提供)
国の特別天然記念物アマミノクロウサギの治療を行い、野生復帰を目指す研究飼育施設「アマミノクロウサギミュージアムQuruGuru(くるぐる)」が20日、大和村思勝にオープンする。けがをしたクロウサギを展示公開し、野生復帰のためのリハビリを行うとともに、東京農工大学と連携し、謎の多いクロウサギの生態解明に向けた研究を行う。クロウサギが生息する奄美大島・徳之島で専門施設ができるのは初めてとあって各分野から注目が集まっている。
同村は、「一歩踏み込んだ形の保全活動」(伊集院幼村長)の構想を具現化するため、2017年に準備検討委員会を立ち上げ、自然保護団体や研究者などと意見交換を重ねた。19年には設置検討委員会で施設整備の検討を始めた。20年から本体基礎工事に入り、5年をかけて整備した。
総事業費は8億2700万円。うち国補助50%、県補助10%、村の負担は約3億3000万円。年間運営費は約3600万円で、年間4万8000人の入場を見込む。
開所する施設は、環境省奄美野生生物保護センターに隣接する「まほろば水と森公園」の敷地内に整備。延べ床面積789平方㍍の鉄筋コンクリート造り一部2階建て構造。
飼育展示室は2か所あり、昼夜逆転した環境で夜行性のクロウサギの活発な姿が観察できる「よるにわ」、昼間の巣穴の中をカメラで見ることができる「ひるにわ」がある。
「よるにわ」に収容されているのは、17年3月に宇検村田検で保護されたケンタ(オス)。けがは、ノネコの咬傷によるもので、傷口が化膿(再発)する可能性があることと、飼育下の生活が長い(約8年)ことから野生復帰は難しいという。
「ひるにわ」には21年2月に宇検村で保護されたユワン(オス)を飼育。ノゲシ(キク科の野草)やサツマイモなどを食べ元気な状態だという。いずれも鹿児島市の平川動物公園から移送された。
くるぐるで保護動物の治療とリハビリにあたる豊田英人獣医師(40)は「クロウサギは施設で最大20匹収容できる。将来的には、繁殖の可能性も出てくるだろう。実現すれば、非常に貴重な知見の集積になる」と期待を示した。
20日午前11時から開所式と祝賀会があり、入場できるのは関係者のみ。一般入場は21日からで開館時間は午前9時半~午後4時半(最終入館は4時)。月曜日休館。
入場料は大人(高校生以上)1000円、子ども(小中学生)700円、未就学児無料。島民割引・村民割引も設定されている。問い合わせは電話0997・57・1196同館。