地域資源を生かす「ローカルコモンズ」をテーマに各地の取り組みを共有した農村計画学会(19日、大和村国直公民館)
地域資源を地域住民によって共同管理する「ローカルコモンズ」をテーマにした「農村計画学会2025年度年次シンポジウム」が19日、大和村の国直公民館を主会場にあった。会議は、同村と秋田県、山口県をオンラインで結び行われ、全国213人が参加した。環境資源を活用した体験観光について報告した同村国直集落のNPO法人TAMASU、中村修代表は「集落の将来像を住民が共有することが大事。ゴールは、若者に生業(なりわい)をもたらし、お年寄りを支え合って生きること」と話し共感を呼んだ。
同学会は、農村環境を活用した農村社会の創出を目指し、地域生活者の交流・啓発の場として1982年に発足。社会・経済・環境科学などの分野を専門とする会員による学際的な交流を行っている。
ローカルコモンズとは、地域社会が共同で管理してきた空間や資源を指し、山の幸を生み出す森林などが例。近年は、地域のコミュニティー行事や文化的行事などを含め、広くとらえられることが多い。
基調講演で、一班社団法人持続可能な地域社会総合研究所の藤山浩(こう)所長は、農村社会について▽世帯規模の縮小▽企業の撤退▽コミュニティーの小規模化・高齢化が進行し、施設や組織の存立が困難になっていると指摘。
解決策として、地域に暮らす人が中心になって形成する農村RMO(地域運営組織)と、情報・交通・直売所などの機能を1か所に集中させた「小さな拠点」作りを提唱した。
ゲートウェイセンターとなる拠点にディマンド型の交通手段を導入し、離れた集落を〝結節〟することで、経済が域内を循環、所得が向上する可能性があるなどと説いた。
秋田県三種町からは、860人・12集落の山間の集落で取り組んだ農村RMOの実例紹介があった。同地区では、ため池や遊休農地、森林資源の活用を目指し、農地デジタルマップを作成。後継者の有無や、従事者の年齢などを調べ、活用のための実験に着手したと紹介した。
中村代表は、TAMASUが実施している体験観光や集落内のローカルルール作りについて報告。「課題を話し合うことで将来像を共有することにつながった。住民の不安を解消し、若者に生業をもたらし、高齢者を支え合える」と話した。
さらに、「観光客や移住者が増えることで、地価や家賃の高騰の懸念がある。住民が住めなくなったら取り組みは本末転倒になる。観光振興は目的ではなく、(地域を継続する)手段に過ぎない」と強調した。
パネルディスカッションも行われ、国直会場で参加した鹿児島大学法文学部法経社会学科の小栗有子教授は「地域の自然や文化はコミュニティーの共同的価値。国直集落は、外部の意見を取り入れ関係性を維持している」と評価した。