海岸部生息拡大もクロウサギ無残

海岸部に生息拡大も、イヌかネコに捕殺されたと見られるアマミノクロウサギ。周辺には「巣穴」状の掘削も=23日、徳之島町金見崎海岸(宮田真誠さん撮影)

金見崎海岸の全景

イヌ・ネコが捕殺か?
徳之島・金見崎海岸 関係者が落胆

 【徳之島】世界自然遺産の島・徳之島の北東部「金見崎(かなみざき)海岸」で、国指定特別天然記念物アマミノクロウサギ1匹の死体が見つかった。今年1月、同島の海岸部としては初めてクロウサギのふんや足跡が確認され、「まさかの海岸部への生息拡大か」と注目を集めたばかり。イヌかネコによる捕殺と見られ関係者を落胆させている。

 金見崎海岸は、クロウサギなど希少野生動物の〝本来のすみか〟の山間部との距離は約1㌔。県道と金見集落(人口約70人)をはさんで奄美群島国立公園(第3種特別地域)指定エリア。「金見崎灯台」からアダン密林の遊歩道を下ると、まぶしい白砂とメランジ堆積岩群、サンゴ環礁、紺碧の海とのコントラストが美しい通称「真崎(まさき)浜」が開ける。

 1月下旬、「山間部から遠いこんな海岸にまさか?」のクロウサギのふんや足跡、アダン密林の下を往来したと見られる獣道も発見していたのは天城町与名間、スピリチュアル観光ツアー代表の宮田真誠さん(52)。観光案内とは別に、個人的に「〝海のクロウサギ〟の生活を追ってみたい」と足しげく観察を続けていた。

 衝撃の光景に遭遇したのは23日正午頃のこと。噛(か)まれたとみられるけい部は開放状態骨が露出していて「痛ましいの一言に尽きた」。経過観察の感想は「ふんはさらに増加。新たにススキやアダンの根元付近の斜面の砂地には〝巣穴〟と見られる掘削も複数確認」。2年前には住民が幼獣の死骸を確認した点も含め、「ほかにも複数の個体が生息していると思う。早急なイヌ・ネコ対策が必要だ」と話す。

 同個体は環境省徳之島管理官事務所の職員が同日中に回収した。全長は約40~50㌢の成獣で死後数日と見られる。

 徳之島でのイヌ・ネコによるクロウサギの被害件数は2024年が9件(ロードキル含め総数64件)、25年は4月23日現在9件(同31件)と推定。イヌ・ネコによる被害が急増傾向にあると指摘する。

 大谷彗(けい)国立公園管理官(30)は「徳之島ではここ数年で、集落内や海沿いでもアマミノクロウサギが見られるなど身近な存在になった」。その一方で、イヌ・ネコ被害が疑われる事例の増加を危惧。「クロウサギは世界自然遺産の島の誇りであり象徴。動物愛護法や狂犬病予防法、徳之島3町のネコ条例に準じたイヌ・ネコの適正飼養は、島民が参加できる世界遺産を守る行動になります。今一度ペットの飼い方に気をつけてほしい」と呼び掛けている。