「高病原性鳥インフル」検出

奄美市で回収されたハヤブサ
群島初の発生、野鳥監視強化

 奄美市名瀬市街地で19日に衰弱した状態で発見されたハヤブサについて、国立研究開発法人国立環境研究所=茨城県=は24日、遺伝子検査の結果、「高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5亜型)」が検出されたと発表した。奄美群島での高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の発生は初。関係機関は、すぐに感染拡大につながるものではないとして冷静な対応を呼び掛けている。

 県は20日、同市名瀬市街地の路上で19日、衰弱した状態で発見され回収された野生のハヤブサ1羽について、簡易検査の結果鳥インフルエンザ陽性を確認したと発表。検体を同研究所に送り、遺伝子検査が行われていた。

 2024~25年シーズンにおける県内の高病原性鳥インフルエンザ発生は、ナベヅルの越冬地となっている出水市で2月16日と17日に連続してH5N1型の高病原性ウイルスが確認されて以来。

 県環境林務部の川瀬翼自然保護課長は「奄美群島での初確認ということで、ほかの野鳥や家禽(かきん)類の状況を注意深く見守る必要がある」と話し、簡易検査で陽性となった19日から続けられている発見地点から半径10㌔以内の重点区域の野鳥監視を強化するという。

 県と奄美市、龍郷町、大和村で連携し監視強化を図る考えで、「池や河口部の野鳥を確認していく。これまでHPAIに感染例のあるカモ、カラスなどを中心に、異常な動きがないかや、死体の確認を続ける」と話した。

 川瀬課長は「高病原性と言っても、人にすぐ感染するものではない。異常な動きをする鳥や死んだ鳥を見かけたら決して触らず、県(大島支庁林務水産課)や市町村窓口に連絡してほしい」と呼び掛けている。

 環境省沖縄奄美自然環境事務所では、「感染は渡り鳥に起因するものだが、鳥以外への感染事例もあるため注意が必要。ウイルスは土壌にも残るほど強いが、人にすぐに感染するものではない。農林水産省のホームページなどで正確な情報を収集してほしい」と話している。

養鶏の異常確認されず
鶏舎再点検、通報呼び掛け 半径3㌔内発生リスク

 奄美市で回収されたハヤブサ1羽から遺伝子検査で高病原性鳥インフルエンザウイルス検出を受けて、県は発生リスクがある回収地点から半径3㌔内で少数を飼養する2戸の農家に電話で聞き取りを行い、鶏に異常がないことを確認した。

 家畜防疫対策課によると、異常の有無の確認とともに飼養管理では鶏舎に野鳥が侵入するような破れがないかなど再点検、異常を確認した場合には早期通報を改めて伝えた。

 また、奄美大島内には100羽以上を飼育する農家は5戸存在する。同課によると24日午後8時現在で4農家と連絡が取れ、異常がないことを確認したという。

 同課の藏薗光輝課長は「異常があった場合は養鶏農家から通報がある。農家のほか、市町村にも情報提供を行っており、前回(簡易検査で陽性確認時)、防災無線での周知を働き掛けている」と述べた。半径3㌔外については通常の管理(飼養衛生管理基準に基づいた)を求めているという。

 鶏卵への風評被害が懸念されるが、藏薗課長は「農場で発生したとしても移動制限により流通することはない。鶏卵を食べて感染することはなく、安心してほしい。加熱(70度以上)すればもっと安心できる」と話し、養鶏では異常は確認されていないことを強調している。

 高病原性鳥インフルエンザが発生したことについて、島内最大規模の飼養農家・南利郎さん(77)は「驚いている。鶏舎に感染が及ぶことがないよう、鶏舎の周りに石灰を念入りに繰り返しまき、消毒も徹底したい。また、カラスなど野鳥が入り込まないよう鶏舎の管理も徹底していく」と語った。鶏に異常がないかは、毎日午前中、ヒナ、産卵鶏など確認しているという。