安木屋場ソテツ群に新葉

被害からの再生を示すように新葉が確認された安木屋場集落の群生地にあるソテツ(4月26日、西康範さん撮影)

「生き延びて」「繰り返し薬剤散布を」
龍郷町、防除事業継続

 龍郷町安木屋場集落には景勝地となっている群生地のほか、集落背後の山斜面にもソテツの群落が残る。外来カイガラムシ(和名ソテツシロカイガラムシ)被害が全域に及び町が助成金を計上して、被害葉の切除や薬剤散布が業者により進められた。黒褐色の幹だけが残り、緑を失った状態が続いていたが、現在、幹頂上部分に新しい葉を確認できる。気温が上昇すると害虫は産卵を繰り返すなど活動が活発する中、町は引き続き予算を計上し防除に取り組む。

 町企画観光課によると、観光振興費としてソテツ群落除伐助成金を計上し事業化。2023年度予算は2千万円で、うち1680万円を繰り越して24年度の秋から冬にかけての防除費用に充てた。24年度の事業費(1547万2千円)は年明けからの作業に役立てられた。25年度も500万円を計上しており、同課は「さらに予算が必要な場合は補正での対応を検討していく」としている。

 集落の阿世知正博区長(73)は、新葉について「集落上の山を含めて確認している。なんとか生き延びてほしい」と願う。防除については「葉の切除後は幹だけが残り心配だった。再生を示すような新緑の葉を守っていくためにも今後も薬剤散布をお願いしたい。1本1本ではなく、全体的に散布する方法はできないものか」と話す。

 一般社団法人日本ソテツ研究会の髙梨裕行会長は「葉を落とした後、幹だけでは光合成ができないだけに、気温が上昇する初夏にかけて新しい葉を出すのは幹の中に残っているエネルギーによるもの。写真による確認だが、新葉の色が健康状態を示すように良く、薬剤の効果かもしれない」と指摘する。ただし気温の上昇により害虫も活発化するだけに、髙梨会長は「新葉が確認されたとしても警戒の手を緩める理由にはならない。海外の文献からCAS(キャス=学名アウラカスピス・ヤスマツイの英語表記通称)は気温が22度以上になると産卵を繰り返すとされ、再び葉に被害が及ぶ可能性がある。周辺にCASが残っている株があれば、すぐに感染が広がる」として今後も観察をしっかりと行い、「区間を守る、財産を守るという姿勢で繰り返し薬剤による散布をお願いしたい」と求めている。