大島特別支援学校への通学バスとして使用している乗用車(4月28日、瀬戸内町阿木名)
瀬戸内町は4月1日から県立大島特別支援学校(龍郷町)に通学する児童生徒に向けて通学バスの運行を開始した。町内の一般社団法人ともいき(同町阿木名、里山香織代表)に町の移動支援事業として運行を委託し、質の高い療育を受ける選択肢が増えたことで町内の児童生徒や保護者らからは歓迎の声が上がっている。
療育とは障がいのある子どもや発達が気になる子どもに対し、その発達の状態や特性に合わせて、さまざまな支援を行うこと。同校から奄美市内までのスクールバスは出ているものの、同町から大島特別支援学校に通学する際には名瀬市街地でスクールバスに乗り換える必要や片道約2時間かかること、支援員の設置などの課題もあり、昨年12月の議会定例会の一般質問でこれらの問題が提起され、町側は「町として通学バスが可能かどうかの議論になったが、学校や県、本町支援事業者を含めた協議が必要なため、実現は難しい」などと回答。町内の事業者にも呼び掛けたが、費用や支援員、運転手確保などで困難なことから通学バスの運行ができないとの回答があった。そうした状況を受けて、町議で就労支援事業所も手掛ける里山正樹さんが新たな一般社団法人を作り、通学支援に乗り出すことから、町側もバス運行に向けて後押ししようと国の障害者特別支援法の移動支援事業を活用した。車両は8人乗りの乗用車で専門の資格を持った支援員が常駐しており、運転は2種免許を取得した運転手が担当する。
バスは児童生徒の自宅付近まで送迎し、行きは午前6時50分頃に古仁屋を出発し、学校には同8時半頃に到着する。帰りは学校を午後3時15分頃に出発し、同4時半~5時頃に古仁屋に到着する。
同町保健福祉課によると、現在小学生1人、中学生2人、高校生3人の計6人が通学バスを利用している。保護者の費用負担額は月額4600円を上限に各家庭の収入の状況によって変更するという。
バスを利用して小学5年の児童を特別支援学校に通学させている古仁屋在住の夫婦(46)は「バスが運行することで保護者の送迎負担も軽くなり、子どもの顔も毎日見ることができ、本人も楽しい表情を見ることができている。新たな選択肢が増えたことも良いことだ」と笑顔を見せた。
同法人の里山香織代表は「学べる手段の選択肢も増え、より質の高い療育環境が提供できるようになったのは良いこと。今後もさまざまなニーズに応えたい」と語った。
通学バスの利用には申請が必要。詳細は同町役場保健福祉課電話0997・72・1068へ。