あまみフルーツアイランド

奄美大島のフルーツブランド確立推進員として配置された熊本さん。今年度の活動計画を説明した

人材、品質、ブランド確立
今年度から事業開始 果樹農業専門の推進員配置

 奄美大島の5市町村やJAあまみ大島事業本部、生産者代表で構成する奄美市奄美大島選果場管理運営協議会(会長・大庭勝利奄美市農林水産部長、事務局・市農林水産課)の2025年度総会が21日、同市役所(名瀬総合支所)会議室であった。奄美群島振興開発事業の交付金を活用し今年度からスタートする「あまみフルーツアイランド確立事業」が説明され、元県職員で果樹農業の専門家を推進員に配置し、奄美大島の生産農家の高収益化(かせぐ農業)実現へ①人材育成②品質保証③ブランド産地の確立―の三つを柱に活動を展開していく。

 大庭会長があいさつし、「奄美大島タンカンのブランド確立(安心・安全基準に沿ったGAP取得、かごしまブランド取得)を目指し今年度から事業が進められる。産地確立のためにも生産者、JAが一体となって選果場の利用促進を図ってほしい」と述べた。JAからは選果場の利用実績(タンカン)として、24年度産の平均単価(共販・委託)は計画の564円を下回る474円となったことが報告された。選果場指定管理者のJAは安定運営のためにも選果場の利用を呼び掛けた。

 総会では奄美市が事業実施主体のあまみフルーツアイランド確立事業が説明された。市農林水産課によると、25年度の事業費は615万8千円(うち約430万円は国・県が補助)。奄美大島のタンカン産地確立を図るのが目的。対象品目はタンカン・津之輝(つのかがやき)で、事業期間は5年間。事業を担当するブランド確立推進員として配置(3年間)されたのが熊本修さん(65)。県職員として農政部門を36年間歩み、定年退職後は今年3月まで5年間、さつま町で果樹の営農指導に携わった。県職時は奄美で2回の勤務経験があり、農業試験場(現在の農業開発総合センター)大島支場で7年間試験研究(ビワ、タンカン、熱帯果樹)、12年から3年間は大島支庁農政普及課で果樹のブランド確立へ商品開発や販売戦略などに取り組んだ。

 熊本さんは「タンカンのブランド産地は屋久島などが知られているが、県内で生産量が一番多いのは奄美大島。ブランド確立へ多くの課題を抱えている中、推進員として改善に取り組みたい」と述べた。人材育成、品質保証、ブランド産地の確立が活動内容。奄美大島のタンカン生産者は約400人とされるが、このうち2割が全体生産量の8割とほとんどを占めており、大規模農家の共販・選果場利用が課題となっている。こうした状況を受けて意欲ある生産者(重点支援対象農家)を各市町村にリストアップしてもらい、指導プラン作成により生産量増加につなげる。品質保証は「光センサー選果機をいかに利用するか」に尽きることから、選果データの活用(改善点を示す処方箋作成)と同時に、未利用農家の把握と利用促進活動にも取り組む。最終的な目標がブランド化で、販売戦略アドバイザーを招へいし、選果場を活用した販売戦略についてアドバイスも予定している。

 光センサー選果機の活用に関し、24年度産タンカンでは果汁が減少したスアガリ果実が確認されたことから、出席者から「気象条件によっては今後もタンカンで増える可能性がある。スアガリを判断するセンサー機能を備えていることから、費用面を業者に相談し稼働できるようにしてほしい」との要望があった。