アマミノクロウサギのかじり跡
大和村フォレストポリス近くの福元盆地でタンカン栽培を始めて23年になります。
それ以前は奄美市の方でやっていたが、傾斜地であることや、日照条件・通作道の悪さもあり断念。そこで一念発起し、新たな場所で農業を始めることにしました。始めるにあたり、タンカンの栽培に適しているかを第一条件として、島内の考えられる場所を全て候補地として見て回りました。数年かかったが、その結果、日照条件や将来規模拡大ができるのかなどの条件がクリアできそうな大和村福元盆地に決めました。その当時の盆地は道路も整備されておらず、目的の畑(ほとんどが耕作放棄地・森林化)にたどり着くのもススキをかき分けながらでした。ところが、いざ開畑してみると思惑とは異なることが多く、防風樹を育てるのに苦労しました。今思えば、一番楽しい時期だったかもしれない。
その頃の福元盆地ではマングースは時折見かけたが、アマミノクロウサギ(以下・・ウサギ)やケナガネズミを見かけることはほとんどありませんでした。マングース防除事業の効果もあってか2014年頃からタンカン幼木の幹や枝・葉をかじる何者かが現れました(私の果樹園よりも食害のひどい果樹園もあった)。以前にクマネズミによる樹皮食害を確認していたが、明らかに様子が異なっていました。このままでは樹が枯れると思い、対策として肥料袋を巻き付けたり、トイレの消臭剤やトウガラシ・ハバネロなど考えつく物を試したが、どれも効果は一時的なものでした。
「タンカン樹皮を食害しているのは何者か?」。柑橘に塗る癒合剤を塗るとその部分はしばらく食害しないので、とにかく数日間隔で繰り返すことにしました。もんもんとした時期が続いたが、鹿児島大学国際島嶼教育研究センターの鈴木真理子さん(現・・環境省奄美群島国立公園管理事務所所属)がカメラを設置するなどして、タンカンの樹皮被害がウサギによるものであることが立証されました。私も含めメディアの方からも、世界自然遺産登録前の大事な時期なのに「表に出すことはどうか」という意見もあったが、今思えばそれとこれとは全く話は別で、事実は事実として捉え早めに表に出していれば、状況は変わったかもしれません。
マングースの捕獲が進むにつれ、ここ数年はあらゆる作物の食害が目立つようになってきました。何もしなければ食われ放題。植えた野菜の苗が翌日には全てないということもしばしばでした。ウサギの農作物食害は福元地区全域に広がっています。大和村・鹿児島大学の協力を得ながら、電気柵やネットなどを試したが、私の果樹園では決定打になりませんでした。多くの試験の結果、やっと現在の金網柵にたどり着き、関係機関の努力により事業で取り組みの道筋もできました。感謝、感謝だ。
ところが、イノシシの侵入防止柵(網目が大きくウサギは通り抜け可能)が先行して設置されている市町村においては、耐用年数の関係からかウサギ、イノシシ双方に対応できる侵入防止柵の設置が難しいと聞いています。ウサギの農作物被害が出てくる以前に設置されたもので、仕方ないとは思うが、何とかならないものか。
大和村で新しい侵入防止柵の設置が始まって数年になるが、一難去ってまた一難。私の果樹園は1~1・5㌶単位で防止柵を回してあるため、場所によってはウサギごと囲ってしまい(ウサギは昼間は穴にいるのは少ない?畑の畦畔ややぶに潜んでいる?)、ここ数年は果樹園内で繁殖まで始めてしまった。
今では園の畦畔に数か所、繁殖巣穴が確認できる状況。繁殖中は親が授乳に通ってくるため、うかつに出入り口は閉じられない。どうすればいいのか。