観衆巻き込む六調で盛り上げ

ステージと客席が混然一体となった里朋樹さんと関西奄美会のパフォーマンス

万博で「千の自然・千の時間」
自然との共生 世界に向けたメッセージも

 【関西】世界自然遺産5地域会議主催のイベント「千の自然・千の時間」が5日、大阪府大阪市此花区の大阪・関西万博会場内EXPOホール「シャインハット」で開かれた。芸能パフォーマンスで奄美大島・徳之島の紹介として関西奄美会が八月踊りを披露。観衆を巻き込む六調で盛況に一花添えた。イベントの締めくくりには自然との共生について世界に向けたメッセージを発表した。

 映像とトークによる各地域の紹介後、芸能パフォーマンスを実施。奄美大島・徳之島からは唄者の里朋樹さんと関西奄美会が出演した。里さんが定番の「朝花節」の一部を独唱した後、関西奄美会会員約60人が八月踊りを披露。会場ではハト(指笛)が鳴り、演者にはな(投げ銭)を手渡す姿も。終盤のワイド節・六調では観覧客らも踊りに参加し、ステージと客席が混然一体となった。

 会場を沸かせる軽妙なトークとしなやかな声でシマ唄を紹介した里さんは「関西の方々と協力して発表できたことに感動。胸を張って世界に発信できるものを先祖が残してくれたと実感した」。関西奄美会の先山和子会長は「参加者の登録など大変なこともあったが、世界に向けてPRする機会を得られたのは光栄で幸運なこと」と振り返った。

 国際シンポジウムでは「世界自然遺産を引き継ぎ、生かす・共生と循環の理念」をテーマに事例発表とディスカッションを実施した。座長を務めた京都大学名誉教授で人類学・霊長類学者の山極壽一(やまぎわじゅいち)さんは「日本人の感性は“森の感性”。『私がいる』のではなく、『そこにある』という感性」と表現。その上で「欧米の人たちから『主体性がない』と言われることもあるが、自然と人間の関係を考える上で今後必要になってくるもの。それは日本の自然から学べる」と持論を述べた。

 クロージングでは奄美大島・徳之島を代表し、安田壮平奄美市長が「自然への畏敬や尊崇の念、伝統文化を一緒に守ることが世界自然遺産を守り、維持していくこと」とあいさつ。締めくくりには世界へ向けた「世界自然遺産5地域メッセージ」を発表。各地地域の取り組みと課題を共有して来たことを世界に発信し、さらなる協力の輪を広げることで「生き物たちと人々が新たな環境文化のハーモニーを奏でる未来に向けた、大きな一歩としていきたい」とした。