トビンニャ(丸内)の資源管理を訴える河合渓教授(7日、奄美図書館)
県立奄美図書館が主催する生涯学習講座「あまみならでは学舎」の2025年度第1回講座が7日、同図書館であった。鹿児島大学国際島嶼教育研究センター奄美分室の河合渓教授(61)=水産学博士=が「あまみのトビンニャが危ない」と題し講演。奄美群島における同種の漁獲量減少・価格高騰の現状を話し、資源管理の必要性と、資源の枯渇を招かない「共生」の在り方を伝えた。57人が聴講した。
「トビンニャ」(和名マガキガイ)は、奄美地方で古くから食用にされてきた長さ5㌢ほどの巻き貝。沖縄では「ティラジャー」と呼ばれることから「ティラダ」と呼ぶ地域もある。
河合教授は、2023年春に奄美大島の各漁協で漁獲方法などの聞き取りを実施。同時に、22年までの年間漁獲量と価格データを調べた。
その結果、奄美大島では17~18年をピークに漁獲量が低下傾向にあることが分かった。13年に1㌔400円だった価格も、最近では1000円~1200円と高騰しているという。
河合教授が減少の要因として上げたのは、▽観光客への過剰な提供▽漁獲ルール(禁漁期・漁獲制限)がない▽繁殖可能になる前の個体の採取▽海水の酸性化(貝殻の形成不全・成長阻害)―など。
また、繁殖期が12~5月であるのに対し、奄美大島での主な漁期が12~4月と重なっていることから「稚貝を放出することができなくなっている」と訴えた。
各地の研究例では、トビンニャは成長すると貝殻が「湾入」と呼ばれる弓型の形状を形成するが、成長には3年を要するという。また、出荷サイズの4・5㌢に成長するまで2~3年かかるとされる。
河合教授は「漁は規制のない状態で行われ、資源量の減少を招いている。価格が高騰しているため、成長途上の貝まで取ってしまっている。これは負の循環。このままでは資源が枯渇する」と警鐘を鳴らし、科学的知見に基づく規制の必要があると強調した。
また、「トビンニャは海底の泥をきれいにしてくれる動物。沿岸生態系で水質浄化の重要な役割を担っている」として、持続的利用が自然との共生につながると話した。
大和村の66歳の男性は「海の中でこんな重要なことが起こっているとは知らなかった。思えば、お通しで出る量もめっきり少なくなった。奄美の食文化を残すため対策を講じてほしい」と話した。