オープニングを飾った18人の三味線合奏(22日、龍郷町りゅうゆう館)
森山さん(左)と中島清彦さんの初共演も実現した(右は楠田莉子さん)

「カサン節を未来に」
中島清彦さん(徳之島)との初共演も

龍郷町町制施行50周年記念「山ゆり会発表会」(東京山ゆり会主催)が22日、龍郷町体育文化センターりゅうゆう館であった。伝統のシマ唄(民謡)の中でも「カサン節」と呼ばれる北大島に伝わる唄い方を学ぶ同会東京教室、奄美教室から総勢30人以上が出場し、多彩なゲストもステージを盛り上げた。約400人が詰めかけた発表会の成功に、森山ユリ子会主(80)は「感無量」と涙ぐんだ。

カサン節は、奄美大島北部の笠利町を中心に受け継がれてきたシマ唄の一種。ゆったりとした節回しで情緒豊かに歌い、唄に深みがあるのが特徴と言われる。同会は、継承と発展を目指し、奄美と東京を拠点に活動している。

ステージは、則敏光副町長の「GO!GO!山ゆり会」の掛け声とともにどんちょうが上がった。18人の三味線奏者が「朝花節」「よいすら節」を奏でる印象的な演出でオープニング。

森山さんが「長朝花節」で変わらぬ安定した声を披露。姉妹共演や親子共演が続き、東京山ゆり会の代表、折原誠司さんも舞台を盛り上げた。

随所でゲストたちも色を添える。中島章さんの奄美歌謡メドレー、藤扇流の華やかな舞、子どもたちのフラ(フラカオスタジオ)など、観客を飽きさせない工夫も随所に。南条かつみさんは、ステージを下りて客席で歌い爆笑をさらった。

徳之島民謡の重鎮、中島清彦さん(徳之島民謡研究会会長)と森山さんの初共演も実現。森山さんも初めて聴くという「徳之島みち節」や「ワイド節」など3曲を歌い、大きな拍手が沸き起こった。

最後は、笠利町赤木名の八月踊りを披露。楠田莉子さんの三味線、森山さんが唄う「六調」でフィナーレとなった。

龍郷町中勝出身で神奈川県在住の福田順之(のりゆき)さん(79)は「ゆり姉(森山さん)とは集落が同じ。後継者育成のため努力を続ける姿に心を打たれ涙が止まらなかった。これからもしっかり伝統を支えてほしい」と感慨深げに話した。

観客を見送った森山さんは「練習生たちは、発表会を重ねるたびにうまくなっている」と話し、「多くの人が来てくれた。言葉にならない。感無量」と言葉を詰まらせ、涙ぐんだ。