認知症と共に生きる社会へ

認知症啓発映画を鑑賞後、専門家による対談式講演会も=6日、伊仙町

映画「オレンジ・ランプ」のモデルとなった丹野智文さん(ビデオメッセージ)

自己決定権の尊重を
伊仙町で 映画上映と専門家講演会

 【徳之島】伊仙町地域包括支援センター主催の認知症啓発イベントが6日、同町ほーらい館であった。認知症への理解を深める実話を基にした啓発映画の上映会と医療専門家による講演が行われた。町内外から約200人が来場し、感動とともに認知症と共に生きる社会の在り方について考えを深めた。

 3部構成でほぼ終日あり、第1部では認知症啓発映画「オレンジ・ランプ」(三原光尋監督)を上映。同作は、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断された丹野智文さん(宮城県出身)の実話を基に妻や家族、仲間、企業、地域の支えで再び希望を見いだして再出発する姿を描いた作品。「認知症になったら人生終わりじゃない」「共に歩んでほしい」などのメッセージが観客の心を打った。上映後には、丹野さん本人からビデオメッセージが寄せられ、「安心して暮らせる徳之島を一緒につくろう」と呼び掛けた。

 第2部では、県内の認知症医療に取り組む専門家、済生会鹿児島病院副院長の黒野明日嗣氏(60)と、きいれ浜田クリニック院長の濱田勉氏(47)が登壇。「認知症とともに楽しく生きる」をテーマに、映画の感想を交えた対談形式で講演。両氏は「認知機能が低下しても感情は正常。感受性は強まる傾向にあるが、自己決定権を尊重してあげることが重要」「認知症は人生の終わりではなく、新たなスタートにもなり得る」と語り掛けた。

 第3部ではそれぞれが講演を行い、黒野氏は「認知症って特別な病気なの?だからなに?」と題して認知症への偏見を取り除く重要性を強調。濱田氏は「認知症と共に生きるための人生会議」と題し、事前に意思を共有し支える体制づくりの必要性を訴えた。

 来場した町内の高齢者施設管理者・里村貴子さん(63)は「認知症の人も自分で決める決定権利がある。地域が理解を深め、声を掛け合うことで支え合える社会が築けると思う」などと語った。

 町では、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になるとの全国的見通しを踏まえ、地域ぐるみでの正しい理解と支援の輪を広げる取り組みを今後も進める方針だ。