船頭のチヂンの音に息を合わせて櫂をこぎ、喜界島の海原を疾走する参加者たち
こぎ手でもあり、サバニで島1周プロジェクトを企画した喜界町青年連絡協議会メンバー
新たに改修した木造舟「サバニ」で島を1周するプロジェクトが5、6日の2日間、喜界島であった。先輩から後輩へと受け継がれた舟で、伝統の行事を20年ぶりに復活。10チーム70人が交代で外洋へとこぎ出し、それぞれの思いを櫂(かい)でつないだ。
島の若手でつくる喜界町青年連絡協議会(田邉大智会長、会員7人)が企画。協議会は2013年から休止していたが、今年1月に新メンバーで再結成した。
プロジェクトは、前協議会が2005年に行い、当時の競技に参加した土岐和貴事務局長(38)が、伝統文化の継承や島を盛り上げるために復活させようと声掛けし、始まった。舟は20年間にわたって放置された往時のものを改修。先輩の文化に対する心意気や思い出が詰まったサバニを生き返らせた。
島の外周は約50㌔。1チーム7人が交代して10の港や入り江を乗り継ぎ、完走を目指した。
5日の午前9時、トップランナーの7人がサバニに乗り込みスギラビーチを出航。海岸に集まった観衆の声援に支えられながら、息の合った櫂さばきで海をかき分け、第1中継地点の荒木漁港を目指した。
初日は、手久津久、花良治、早町などを回り志戸桶漁港で競技を終えた。2日目の6日は、小野津、坂嶺、湾などを経由し、午後5時頃に発着点のスギラビーチに無事到着した。2日間の合計タイムは約13時間30分だった。
荒木―手久津久間でこぎ手を務めた前協議会の1期生で、05年の競技にも出場した栄忠則さん(63)は「海から見た島は本当に美しい。喜界島ブルーや自然環境の魅力など、子や孫の世代が感動できる島だと再認識できた」と満足した様子で話した。
田邉会長(41)は「自然や海のきれいさ、わくわくする楽しさを他の人にも味わってもらおうと復活させた」と強調。「サバニは島の伝統。先輩からのバトンを受け渡しながら、文化を引き継げるよう続けていきたい」と笑顔だった。