トラップ(わな)に設置される誘引剤はミカンコミバエ用に比べて強力性で差があるのが、セグロウリミバエの防除を難しくしている(資料写真)
主にウリ科植物等に寄生し、腐敗・落果させるなど被害を与えるセグロウリミバエ。大量発生により移動規制の「緊急防除」が行われている沖縄に続き、奄美でも雄成虫の誘殺数増で深刻な状況にある。京都大学名誉教授で昆虫生態学・応用昆虫学専門家の藤崎憲治氏(78)は奄美での防除対策について、特に誘殺数が多く発生地域の沖縄本島に近い与論島では研修などにより住民の理解を得た上で寄主植物の除去を徹底し、個体群に打撃を与える取り組みを求める。
藤崎氏は沖縄や奄美のウリミバエ、ミカンコミバエなどの防除研究に長年携わってきた。現在は有識者の立場から農林水産省の侵入害虫対策に関わっている。
ミカンコミバエとセグロウリミバエについて「同じ属だが種が違う近縁種で、誘引剤への反応が異なる。ミカンコで用いられている誘引剤(メチルオイゲノール)は非常に強力で効果が高く、雄除去により個体を減らすことができる。ところが他のミバエ類同様にセグロで用いられている誘引剤(キュウルア)は十分に減らし切れていない」として藤崎氏は、沖縄県が実施している不妊虫放飼の必要性を挙げる。だが現状では不妊虫の増殖体制が整っている沖縄に対し、未整備の奄美では取り組むことができない。
藤崎氏は「与論島で不妊虫を放飼できれば、すぐに発生を抑制できる大きな効果が生む。距離的に近い沖縄本島北部から飛翔によりセグロウリミバエが侵入し、自然分散の形で与論に入り込み急激に増えたと解釈できるだけに沖縄県から提供してもらう方法があるが、やんばる地域など北部で最初に誘殺された沖縄では、今はほぼ全域(沖縄本島)に拡大しており奄美に提供できる状況ではない。沖縄の方も増殖に有利な系統づくりは、まだできていない」と指摘。鹿児島県で求められる取り組みとして「現場の実態を県政のトップに伝えて説得し、予算化により不妊虫が放飼できる増殖体制を整えるべき。予算をかけて施設を整備しなければ解決しない」と提案する。与論での不妊虫放飼に踏み込めない現状では「薬剤散布が行われていない家庭菜園が幼虫の発生源になることから、住民の皆さんにしばらくは野菜類などの栽培を我慢していただき、野生化しているものも含めて寄主植物の除去を徹底することが重要」と呼び掛ける。
藤崎氏は「グローバル化によって物資、人が世界的に移動している。さらに気候変動による温暖化で東南アジアなど海外に生息する病害虫が国内に入り込むリスキー(危険)な状態にある。こうした害虫が寄生する熱帯果樹などは本州でも栽培可能となっている。この問題は南西諸島など一部の問題ではなく国内全体の問題と認識し、食料自給のための対策と捉えて国策で戦略を持って取り組むべき。防除のための予算化、水際防止のため検疫業務や防除対策にかかわる植物防疫所職員の増員など2段階で進める必要がある。国の会合で働き掛けていきたい」と語った。

