「認知症フレンドリープロジェクト第4弾」を展開している奄美市高齢者福祉課(名瀬地域包括支援センター)の岩木千秋さん(左)と重山沙生さん(12日、奄美市役所)
生活関連企業も対象にサポーター養成講座
認知症の人が尊厳を保持しながら、希望を持って暮らせることを目指し、2023年6月に「共生社会の実現を推進するための認知症基本法(認知症基本法)」が成立、24年1月1日に施行された。これにより昨年から毎年9月が「認知症月間」、9月21日が「認知症の日」(世界アルツハイマーデー)と定められた。奄美市では昨年度から、正しい知識と理解を深めてもらうための普及啓発などを目的に「認知症フレンドリープロジェクト」を進めており、第4弾を今月から展開中。09年度から継続しているサポーター養成講座は、接する機会の多い生活関連企業に対しても行っており、特別視するのではなく身近に感じながら共に支え合う関係づくりへ踏み出している。
市高齢者福祉課(名瀬地域包括支援センター)によると、同プロジェクトは昨年1月にあった認知症啓発映画「オレンジ・ランプ」(三原光尋監督)の上映が第1弾。映画のモデルになった主人公の当事者(若年性アルツハイマー型認知症と診断)を招いての講演(同5月)が第2弾で、ちょうど1年前の9月に県立奄美図書館でも行った啓発展示が第3弾。これまで市役所のみでしてきた展示を「できるだけ多くの市民の皆さんの目に触れさせたい」との趣旨から。
そして今回の第4弾は啓発場所をさらに拡大。引き続き同図書館1階ロビー(9月末まで)、新たにイオンプラザ大島店3階踊り場(同)、市内調剤薬局(計23か所でうち笠利・住用は1か所ずつ、9月中で展示期間は各薬局で判断)が加わった。役所内での展示は名瀬が3階市民交流スペースで16~26日まで。笠利・住用の庁舎ロビーでも9月中にある。展示物はパンフレットや関係書籍など。
担当する同課の岩木千秋(ちあき)主査、重山沙生(さき)看護師は「展示によって認知症への偏見をなくし、正しい知識を伝えたい。特徴、種類、症状のほか、どういった対応で見守ればいいのか、共に生活していくヒントも示している」と説明する。イオンと図書館には、授業の一環としてサポーター養成講座を受講した大島高校1年生による、受講後に感じたメッセージ(オレンジ色のカードに無記名で記入)も集合体として展示。岩木さん、重山さんによると、同1年生は「認知症に優しいまちって、どんなまちなんだろう」と考察し、それによって「お互いに支えあえるまち」「理解しあい思いやりにあふれたまち」といったメッセージのほか、「普通に接していきたい」「支えたい」という気持ちも表している。
大島高校での講座は昨年に続いて。岩木さん、重山さんが講師として出向いた。「認知症を知る」という授業として「市のサポーター養成講座を受けてみたい」との相談が高校側からあり実現した。「生徒の皆さんがもともと持っていた認知症のイメージは、『何もかも分からなくなってしまうのでは』というもの。養成講座を受けることで『私たちと変わらないよね』という気付きにつながる」「もともと子どもたちは偏見を持っていない。偏見を持たないまま大人になってほしいだけに、正しい知識を得る場として養成講座を受講する機会を広げていきたい」(岩木さん、重山さん)。
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サポーター養成講座に関する相談の窓口が奄美市の包括支援センター(名瀬地域の場合=電話0997・52・1111〈内線5033〉)。1講座あたり90分間を設定。受講後にはサポーターを示すカードが渡される。同講座を奄美市が開設するようになり今年度で16年目だ。累計で約7千人が受講しており、子どもたちを対象に小中高校、地域住民を対象に集落公民館などのほか、事業所向けも行っている。「サポーターは認知症の人々を見守る皆さん。養成講座の受講によって子どもから高齢者まで、いろんな世代が関わるようになった。高齢化に伴い自然増の形で認知症の人が増える印象だが、高齢者だけの病気ではない。65歳以下の若年性認知症の方もおり、当たり前で身近な世の中になりつつある。だからこそ、あまり特別視してほしくない。生活の一つというイメージで接していただきたい」と岩木さん。
養成講座は開催依頼に基づき、専門知識がある包括支援センター職員が駆け付ける。対象者(受講者)に合わせてメニューを組み、テキストを配り説明したり動画を視聴したり、意見交換のグループワークも取り入れている。事業所向けで最近開いているのは金融機関の社員に対して。こうした生活関連企業の場合、「気になるお客様」と接する機会がある。どのような対応が求められるか。岩木さんは「ゆっくり話をしてみましょう、落ち着ける場所で個別に話を聞くなどの方法をアドバイスしている。皆さん接遇のプロ。認知症への正しい知識があれば、接遇にも余裕が生まれるのではないか。講座開催だけでなく相談先、つなぎ役としてもこちら(包括支援センター)の存在を認識していただけたら」と語った。
共に支え合う社会づくり。正しい知識と理解へ啓発、そしてサポーターの養成へ。奄美市ではさまざま場、機会を捉えて進めている。
認知症とは さまざまな原因により脳に変化が起こり、それまでできていたことができなくなり、生活に支障をきたした状態。症状として認知機能障害はもの忘れ、理解・判断力の低下など。行動・心理症状(BPSD)は不安、不眠、いらいらなど。老化によるもの忘れと認知症のもの忘れの違いは次の通り。
老化=体験の一部分を忘れる、ヒントを与えられると思い出せる、時間や場所など見当がつく、日常生活に支障はない、もの忘れに対して自覚がはっきりしている▽認知症=体験全体を忘れる、新しい出来事を記憶できない、ヒントを与えられても思い出せない、時間や場所などの見当がつかない、日常生活に支障がある、もの忘れに対して不安を抱く(奄美市掲示資料から)

