アマミノクロウサギによるタンカン樹木の食害を示すかじり跡(大和村の果樹園)
国の特別天然記念物で国内希少野生動植物種に指定されているアマミノクロウサギによるタンカン樹木への食害は、被害額が年々増加し被害地域も拡大している。共生に向けて抑制が課題だが、国の補助でイノシシ侵入防止柵整備を先行している市町村は耐用年数の関係で、クロウサギ対策用の二重の柵整備は困難との受け止めが農家にはある。支援に取り組む農林水産省は柔軟に対応する姿勢を示しており、「二重は可能」との立場という。
先月中旬、奄美大島入りし、島内の果樹園で食害状況を視察するとともに農家などとの意見交換も行った公明党の窪田哲也参院議員が、農水省の見解を明らかにした。同省は鳥獣被害防止総合対策交付金により、被害防止計画等を作成している市町村を事業要件に対策を支援している。
イノシシ対策として島内で整備されている侵入防止柵もその一つ。イノシシ用の柵は、網目が大きくクロウサギは通り抜けることができるため、農家はクロウサギ、イノシシ両方に対応する取り組みとして「クロウサギ用は別にする」二重の整備を求めているものの、地元自治体などの説明から「国の補助で実施しているため、柵の耐用年数期間の関係で新たな整備は難しい」と受け止めている。こうした農家の声を窪田議員は農水省の担当部局に届けたところ、「農水省は、まずは被害防止対策が施されていない所を優先する立場。その上でクロウサギ用の新たな防止柵整備については、イノシシ用の耐用年数(金網は14年以上)以内であっても柵を二重にしても構わないという見解」と説明する。
イノシシ用に加えてクロウサギ用も整備する柵の二重化に向けては「地方自治体の判断が重要になるのではないか。負担額の8割は戻る地方交付税措置ができるだけに、地方自治体が中心となっての取り組みを」と窪田議員。同じ地域内でも被害が出ている、出ていない箇所が存在する中、「農水省はエリアを囲む形で一体的な整備(侵入防止柵)の必要性を挙げている。各自治体がばらばらに対応するのではなく、情報を共有しながら奄美大島全体での対応を」と指摘する。
なお、市町村報告に基づき県がまとめたクロウサギによる農作物被害(奄美大島・徳之島)の推移をみると、2017年度は77万円に過ぎなかったが、19年度には509万円に大幅増。22年度743万円、23年度983万円まで増え、24年度は1035万6千円と1千万円台に達した。外来種対策が進んだことで、生息数は回復傾向にある。

