代表的なジオサイトの一つ、サンゴ礁段丘が一望できるテーバルバンタの眺め
日本ジオパーク委員会からの一報に対応する隈崎町長
日本ジオパーク委員会は6日、喜界島の全域とサンゴ礁海域にあたる「喜界島ジオパーク」を日本ジオパークに認定した。喜界島は世界的に貴重な隆起サンゴ礁でできた島で、特徴的な地質・地形のほか、サンゴ礁が育む自然環境や暮らし、教育への活動が評価された。2018年の構想着手から7年、成果が実った。
日本ジオパークは、貴重な地形や地質を保全し研究や教育に生かす地域認定プログラムで、日本ジオパーク委員会が認定する。全国48地域目で、鹿児島県内では霧島、桜島・錦江湾、三島村・鬼界カルデラに続いて4地域目。奄美群島は初めてで、国内最南端の認定地域となった。
喜界島ジオパークの総面積は陸域56・82平方㌔、海域92・0平方㌔の計148・82平方㌔。見どころとなるジオサイトには、隆起サンゴ礁の高台地「百之台国立公園展望所」、完新世のサンゴ礁段丘が広がる「荒木中里遊歩道」、サンゴの石垣が残る「阿伝の石垣」といった25サイトを設定した。
この日は午後4時頃、喜界島ジオパーク推進協議会会長の隈崎悦男喜界町長に電話で一報が入り、認定が伝えられた。隈崎町長は「7年間の活動が結び付いた。これからがスタートだ。まずは走りだすための体制、組織づくりを実現しながら、隆起サンゴ礁が育んだ文化を、次世代の子どもたちにつなぐための観光や農業、教育へと広げていきたい」と話した。
日本ジオパーク委員会は、喜界島サンゴ礁科学研究所と連携した専門的な知見の蓄積や魅力の発信のほか、サンゴ塾やサンゴ留学といった教育分野への波及、ガイドや住民参加への広がりなどを評価し、「ジオパーク活動によって持続可能な地域づくりを進めるという明確な意思が確認できた」とたたえた。
喜界町は、貴重な資源を次世代につないでいこうと、2018年6月に構想検討委員会を立ち上げた。23年6月には推進協議会に移行し、認定に向けた取り組みを続けてきた。今後は、熊本県阿蘇など国内10地域が登録される「ユネスコ世界ジオパーク」の認定も視野に、活動を向上させていくという。
喜界島は、10万年前にサンゴ礁が隆起してできた島で、地球の成り立ちが分かるなど、地質学的に重要な地域として、世界の研究者が注目している。24年には、国際地質科学連合が認定する世界の「地質遺産100選(セカンド100)」にも選ばれている。
喜界島ジオパークの認定にサン(3)ゴ(5)のポーズで記念写真に収まる関係者
「貴重な地形や地質が残る自然公園」日本ジオパークの認定を受けて、喜界島出身者から喜びの声を集めた。郷友会・東京喜界会会長の森田悦史さん(67)=上嘉鉄=は「喜界島は、地域が誇る掛け替えのない自然遺産。登録へと町一丸となって進めてきた取り組みに心からお祝い申し上げる」と歓迎。「今後は地質(サンゴ)を生かした教育、地域観光の活性化を」と期待を口にした。
東京奄美会元青年部長で、現在喜界町議の原田尚樹さん(47)=川嶺=は「サンゴ礁が隆起し続け、生き続けるパワーアイランドだ」と喜界島を称し、「東京から島へ戻り、この瞬間に立ち会えて大変うれしく思う。これを機に、文化伝統、教育、観光、自然保全、島の魅力をしっかりとつなぎ、引き続き、子どもたちが誇りを持って未来へ羽ばたける島にしていきたい」とした。
喜界島出身の唄者で海外へも活動の輪を広げている牧岡奈美さん(41)=赤連=は「大変うれしい。シマ唄は、きれいな海やサトウキビ畑の恵み、家族のつながりなど、喜界島らしさがたくさん詰まった島の人たちの心の声。自然とシマ唄、どちらも大切にしながら未来へつなげたい」と喜んだ。
牧岡さんの安田民謡教室の後輩で、渋谷で黒糖焼酎バーを切り盛りする唄者・田向美春さん(40)=先山=も「喜界島の唯一無二の自然と、そこに息づく文化がジオパークという形で未来へと記録され、伝えられることに大きな意義を感じ、うれしい」と言葉を弾ませた。
また、元関西喜界会会長で三宮法律事務所(神戸市中央区)を率いる弁護士の模(ばく)泰吉さん(78)=浦原=は「世界自然遺産登録と違い、日本ジオパークと言われてもピンとこないが認定は光栄であり、うれしい。喜界島を知らない人たちにPRできる好機だ。中でも『サンゴ留学』の制度はとても歓迎すべきことで、もっと広めてもらいたい。地球のダイナミックな動きを喜界島で体験した若者が喜界島から巣立つことで、さらに島の存在をアピールしてもらいたいですな」と期待感を示した。

