徳之島、無念

【準決勝・徳之島―出水中央】3回表徳之島一死満塁、4番・長尾の走者一掃三塁打で一走・嶋田も生還、3―0とする=平和リース

逆転サヨナラ負けで決勝逃す
秋高校野球第14日

 【鹿児島】第157回九州地区高校野球大会鹿児島県予選第14日は9日、鹿児島市の平和リース球場で準決勝2試合があった。

 奄美勢の徳之島が出水中央と対戦。九回に3点を挙げて逆転に成功したが、その裏に集中打を浴び7―8、無念の逆転サヨナラ負けで決勝を逃した。

 決勝に勝ち進んだ神村学園と出水中央が九州大会(宮崎・10月25―31日)出場を決めた。10日は休養日。最終日は11日、同球場で午前10時から決勝がある。

 試合結果は次の通り。

   =平和リース=
 ◇準決勝(第2試合)

徳之島
004000003 7
002003003X 8
出水中央

【徳】長尾―川畑
【出】竹山、脇迫、北鶴―先立
 ▽三塁打 長尾(徳)▽二塁打 井上(出)

(徳)
3087615300112
打安点振球犠盗併失残
391587201018
(出)

 【評】徳之島は三回表、一死満塁から4番・長尾の走者一掃右越え三塁打、5番・川畑の中前適時打で4点を先取。その裏2点を返されたが、エース長尾を中心に粘り強く守り、押し気味に試合を進めていたが、六回裏に集中打を浴び、3失点で逆転を許した。九回表、二死一二塁と粘り、代打・井川の中前適時打で同点。3連続四球を選び、連続押出しで2点を勝ち越す。このまま勝ち切るかと思われたが、その裏に再び集中打を浴び、無念の逆転サヨナラ負けだった。

【準決勝・徳之島―出水中央】9回表徳之島二死満塁、押出しで三走・長尾が6―5と勝ち越しのホームを踏む=平和リース

【準決勝・徳之島―出水中央】9回表徳之島二死一二塁、起死回生の同点打を放ち、一塁ベース上でガッツポーズする代打・井川=平和リース

持てる力、全て出し切る
徳之島 レベルアップのエネルギーへ

 良い所も悪い所も全て出し切ったから「悔いはない」(地頭所眞人監督)と胸を張って言える。しかし勝てなかったから「悔しい以外の言葉が思いつかない」(嶋田雄心主将)のも現実だ。まるで夏が終わった3年生のように悔し涙を流す徳高ナインの姿が印象に残った。

 今大会を通じて成長した姿は随所に見られた。エース長尾は立ち上がりから快調に飛ばし、自らのバットで先制点をたたき出す。三回裏に2失点した直後は一走を、六回裏に3失点で逆転を許した直後は打者走者を、いずれもアウトにとって、それ以上の失点を防いだ。

 この守備のち密さが九回表の逆転劇を生む。3回戦の鹿児島情報戦のように、準々決勝の尚志館戦のように「打てば長尾が何とかしてくれる」信頼で3番・嶋田が初安打で口火を切った。代打・井川天晴は「長尾さんのために」の一念で、やや差し込まれながらも111㌔の巨体に全身全霊を込めて中前に起死回生の同点打を放った。8番・紀乃倖翔は「投球練習でもボールが荒れていたからワンチャンあると思っていた」とフルカウントから4球ファールで粘り、逆転となる押出しの四球を選んだ。

 土壇場九回で逆転し、2点のリードを奪う。勝利の流れをつかんだかと思われたが「どこか気持ちが抜けていた部分があったかもしれない」と長尾涼。再び集中打を浴び、無念の逆転サヨナラ負けだった。

 九回に逆転できたのは「今の徳之島の力」と地頭所監督。一方で「リードを守り切れなかったのも今の力」と厳しい現実を直視する。夏に初戦敗退だった悔しさは、間違いなく20年ぶりの4強へと導く原動力となったが「歴史を変えるつもりでやってきたけど変えられなかった。今の方がもっと悔しい」と長尾は言い切る。この悔しさは来春、そして来夏、更にレベルアップするためのエネルギーになる。(政純一郎)