「命の溢れる母なる海」をテーマに世界的な水中彫刻家が制作し、徳之島の海底に設置される作品と見学者たち=13日、徳之島町山漁港

トークセッションで左から高岡徳之島町長、作者テイラー氏、水原さん、徳田漁協長ら
【徳之島】徳之島町は13日、とくのしま漁協と協力し、世界初の水中彫刻公園の創設者として知られる英国の水中彫刻家ジェイソン・デカイレス・テイラー氏による日本初の海底彫刻作品「Undersea Village(海底村)」のオープニングセレモニーを同町山公民館で開いた。制作協力者の俳優・モデル水原希子氏も出席し、トークセッションや作品のお披露目を通じて住民と交流を深めた。
同事業は、ふるさと納税を活用したプロジェクトの一環。徳之島町によると「徳之島の自然と人々の暮らしが共生する未来を象徴し、海洋生態系の再生や観光振興、環境教育の場としても機能することを目指す」という。作品は環境に優しい素材で制作され、時間の経過とともにサンゴが着生し、魚礁としても機能する仕組みだ。テイラー氏には2年前から制作を依頼していた。
海底彫刻のテーマは「子宝の島」から着想を得た「命のあふれる母なる海」。アマミホシゾラフグが描く海底のミステリーサークルや島の山並みもモチーフに、モデルには徳之島の海を愛する水原さんが協力した。作品は英国で制作された後、分解して徳之島へ運ばれ、山漁港で組み立てを行った。コンクリート製の台座を含めたサークルの直径は約5・4㍍、総重量は約40㌧に及ぶ。
トークセッションには満員の約120人が詰めかけ、子どもや若い世代でにぎわった。高岡秀規町長は「海と共生する地域づくりの象徴的な取り組み」の意義をあらためて強調した。
テイラー氏は「『母なる海』は人間にとって食料や空気の源。丸い形は命の循環、太陽と月の動き、そして海の生命の輪を象徴している。サンゴが作品を包み込み、海と一体化して初めて完成品となる」と語り、「この作品が多くの人に海の大切さを考えるきっかけになれば」と思いを述べた。
水原さんは2022年にダイビング免許を取得後、評判を聞いて徳之島を初訪問。「徳之島の海は別次元。穏やかに泳ぐウミガメやザトウクジラとの出会い(スイミング)に感動した」と語り、「海を愛する気持ちが一致していたので、モデルの依頼を断る理由はなかった」などと笑顔を見せた。
とくのしま漁協の徳田進組合長は「水温上昇で磯焼けが進み、生物が付きにくくなっている。アート魚礁としての役割にも期待したい」と話し、SDGsの観点からも事業の意義を強調した。
セレモニー後、山漁港広場で作品の披露と記念撮影が行われた。地元郵便局長の男性(50)は「海中という人目に触れない場所に設置することで、自然との共生を象徴する強いメッセージになる逆転の発想も面白い」と感想を話した。
同海底彫刻作品は14日頃にも徳之島町井之川海岸東の沖合約200~300㍍、水深10~20㍍の地点に大型台船で沈降設置される予定。総事業費は約4050万円で、町のふるさと納税財源が充てられる。

