子株切り分け保護を

徳之島町指定記念物(天然記念物)となっている同町手々にある「ソテツの元祖」(町ホームページより)

天然記念物「ソテツの元祖」存在
徳之島CAS被害で提案

 ソテツシロカイガラムシ(アウラカスピス・ヤスマツイ=英語表記の通称CAS〈キャス〉)は徳之島にも侵入しているのが確認されたが、徳之島町には伝承などから同島内で最も古いとされているソテツが存在する。町は天然記念物に指定しており、こうした貴重なソテツの保護へ一般社団法人日本ソテツ研究会(髙梨裕行会長)は「被害に備えた遺伝子の保全につながる」として子株を切り分ける取り組みを提案する。

 同町郷土資料館によると、1976年11月に町の天然記念物として指定されたのは手々(てて)にある「ソテツの元祖」。大正6年に発行された坂井友直氏著『徳之島小史』に「今を去る400年前、手々村に政勝という射的の名人あり」との記載があり、加計呂麻島の諸鈍(しょどん)城において開催された射的大会に出場。射的の成績により城主から賞として小銃を授けられたが、これを断り庭園のソテツを代わりに持ち帰り手々の自宅に植え付けたという。

 同小史には「これが徳之島のソテツの元祖」と記しており、これを根拠に町指定文化財とした。郷土資料館は「現在は空き地になっているが、ソテツは今でも残っている。世代が変わっている可能性があるものの400年以上が経過したソテツ。手々地区でもCAS被害が確認されているが、このソテツには現在のところ被害が及んでいない」と説明する。

 ソテツ研の髙梨会長は「伝承かもしれないが、数百年前のソテツとなるとかなり古く、国内における広がりや起源などを調べる上で貴重な史料。奄美大島の状況から分かるように感染力がかなり強いCASから守るため、親株と同じ遺伝子である子株を切り分け、大学などの専門機関で保護し育てる取り組みが必要ではないか。大至急保全しなければ奄美の古いソテツの遺伝子サンプルが失われてしまう」と危惧する。

 子株の切り分けは事前の策だ。「子株のバックアップであり、被害に遭ったとしても子株から成長したソテツを再び現地に植えることができる。CASの侵入を防止する専用のハウスを設けて地元で子株を育てる方法もある。歴史のあるソテツを守るという認識で地元の行政機関が率先して関心を持ち、ぜひ取り組んでいただきたい」(髙梨会長)。薬剤による防除や伐採だけでなく古いソテツの遺伝子を残す取り組みも求められそうだ。

メモ

 CAS ソテツの集団枯損をもたらす外来のカイガラムシ。1972年にタイで発見され、寄生するソテツの輸送を通じてアジアや米国の自生地に広まったとされている。在来種とは異なり、ソテツの根や幹の深部にまで寄生し、葉は黄白色となり立ち枯れする。約20年前には台湾やグアムの自生地で壊滅的被害をもたらした。