龍郷町の長雲峠では、奄美自然観察の森に通じる町道でヤマヒヨドリバナ(吸蜜植物)が草刈りされずに残っているため、花を目指して飛来する多くのアサギマダラが観察できる
独特の色合いを持ち、翅の形態にも機能にも「洗練された美しさがある」のもアサギマダラの魅力だ
日本列島を長距離移動するチョウ・アサギマダラの秋の渡りは、奄美大島でも飛来が確認されている。龍郷町の長雲峠のうち奄美自然観察の森(奄美群島国立公園ビジターセンター)に通じる町道では管理作業の草刈りの際、アサギマダラが好む吸蜜(きゅうみつ)植物を残しており、多くの飛来が確認できるスポットとなっている。
町道周辺に繁茂する植物で、草刈りされずに残っているのはキク科の多年草ヤマヒヨドリバナ。長雲峠一帯は、この植物の自生地が多くある。自然観察の森の川畑力指導員によると、町道の管理にあたる作業班が「アサギマダラが好む植物」と認識し、渡りの時期に合わせて配慮しているという。
他の草は刈り取られている中、ヤマヒヨドリバナだけが残る。「気温の関係なのか11月に入っても飛来をなかなか確認できなかったが、ここ1週間ほどの間に一気に飛来数が増えた。マーキング(翅(はね)への標識)する人も見掛ける」(川畑指導員)。22~24日までの三連休、奄美地方は晴天に恵まれたが、長雲峠内の吸蜜植物がある場所では、多くのアサギマダラが飛び交う様子が見られた。
アサギマダラ研究家として知られ、『謎の蝶 アサギマダラはなぜ海を渡るのか?』などの著書がある栗田昌裕さん=医学博士=は「アサギマダラは植物に依存する。ところが吸蜜植物は年々減る状況にあるだけに、龍郷町のように開花する植物を残し守る取り組みは正解。屋久島あたりを経由して飛来してきたのではないか。マーキングや再捕獲によって渡りの謎を調べていくことができるだけに、今後も継続をお願いしたい。隣の喜界島は逆に花が少なく、それによって飛来数も少ないと聞いている。花が多いことで奄美大島への飛来数が増えているようだ」と語る。
今年の秋の渡りの全国的な傾向について栗田さんは「寄せられている情報に基づくと数的には悪くないようだが、マーキング活動が盛んな石川県ではとても少なく、逆に四国や九州などは多いとばらつきがあり、地域による格差が顕著ではないか」と推測している。
メモ アサギマダラ タテハチョウ科で、アゲハチョウほどの大きさ。翅へのマーキングが可能なため、春と秋には1千㌔から2千㌔もの旅をすることが確認されている。翅に標識を記して飛ばし、遠隔地で再捕獲するマーキング調査の愛好者は全国に存在する。温度に敏感で22~26度が適温とされ、熱暑に弱く逆に寒くなると動けなくなる。台風を上手に活用して移動したり、雨が降る前に一気に移動することから「気象を読む」との見方もある。

