青少年ミュージカル「KIKUJIRO」(20日、龍郷町りゅうゆう館)
維新三傑の一人、西郷隆盛の長男として幕末の龍郷町で生まれ、日本の政治史に名を刻んだ菊次郎(1861~1928年)の波乱の生涯を描いた青少年ミュージカル「KIKUJIRO」(同実行委員会、龍郷町教育委員会主催)が20、21の両日、同町りゅうゆう館であった。初日約500人、2日目約600人(満員)が入場。観衆は、舞台で歌い踊る32人の子どもたちに喝采を送り、その成長に涙を流した。
同ミュージカルは、菊次郎の生誕160年(2021年)を記念し企画され、初演は22年3月。25年度は5期生となる。メンバーは、小学生9人、中学生14人、高校生9人の32人で構成。毎週1~3回の稽古が5月から行われ、本番を迎えた。
舞台は、流刑となった隆盛と愛加那(菊次郎の母)の出会い、薩摩藩統治下の「砂糖地獄」、西南戦争での負傷と葛藤、台湾宜蘭(イーラン)庁長時代の活躍を2部構成で描いた。
1部の龍郷編では、菊次郎の少年期を演じた姫野千葵(ちい)さん(15)(円小~朝日中3年)、青年期の山口京桜(ゆら)さん(16)(龍南中~大島高2年)、隆盛の3番目の妻・糸役の圓山結礼(えんやまゆらい)さん(16)(龍北中~大島高2年)の歌が観客の心を捉える。
隆盛の死を知り、糸(圓山さん)が喪服姿で独唱する場面では、独特の緊張感とともに会場は深い静寂に包まれた。糸の思いに感情移入したのか、涙をぬぐう人も多かった。
休憩を挟んでの2部、台湾編では演出を一変。長台詞(ながぜりふ)が続く場面が続き、脇役たちの演技力が発揮された。
龍郷編で菊次郎の大叔父・佐民を演じた宮山來三(らいぞう)さん(16)(龍南中~大島高2)は、菊次郎に仕える現地役人役をコミカルに好演。随所にアドリブの演出を織り込み、笑いで舞台に深みをもたらした。
地元豪族・陳一族の親分役、髙優一郎さん(16)(龍南中~奄美高1)と、屋台店主役の村山遥さん(17)(龍南中~大島北2)は、本来の演技力をいかんなく発揮した。
村山さんは龍郷編では、薩摩藩の代官役という重要な役どころを演じた。台湾編では一転、ユーモラスな演技を求められたが、見事に演じきった。
5期の舞台は全般を通し、前回まで多用した光とスモークによる演出を最小限に抑え、演技・歌唱ともに充実した出演者にゆだねた演出となった。
初日の舞台を終え安堵の表情を浮かべた総合演出の松永太郎さん(51)。「自信を持って披露できた。初期からかかわってきた子どもたちは、できることも増え自信につながっている」と、成長を称えた。
出演者たちと交歓し会場を出た赤徳小4年の加藤颯馬君(10)は少し高揚した様子で、「(菊次郎が)銃で撃たれ、右足がなくなっているシーンの再現力がすごかった。ダンスにも魅了された。同じように踊ってみたい」と、舞台の余韻に浸っているようだった。
初日(20日)の舞台を終えた出演者たち。全てを出し切った満足感、次の舞台に向けたあくなき探究心、感情の一端を言葉にした。
姫野千葵さん(菊次郎少年期役)「気持ちが入っていい舞台になった。来年3月のさつま町講演は初めての島外。菊次郎の生き方を知ってもらう機会としたい」
山口京桜さん(菊次郎青年期役)「前半に感情を込めすぎたかもしれない。声を枯らしてしまったが、全般を通し、気持ちをしっかり演技に生かせた」
宮山來三さん(龍佐民役など)「とにかく楽しくできた。ここ(舞台)は、自分が自分らしくあれる居場所だった」
圓山結礼さん(西郷糸役)「幕が開いたら勝手に体が動いた。最高の舞台になった」
村山遥さん(代官役など)「悪代官のどこかに〝いい心〟をにじませる演技が難しかった(舞台を終えて)代官役を演じた時間の記憶が全くない」
髙優一郎さん(陳一族の親分役など)「稽古中は何度もつまずいた長台詞も本番では集中してやり切れた。無になった」

