奄美中央病院の通所リハビリ(デイケア)では「ノーリフトケア」の実践に力を入れている
地域医療・福祉で果たす役割や課題について説明する左から喜島勉さん(リハビリテーション科副技師長)、吉田悦司さん(介護福祉士主任)、正野夢大さん(理学療法士主任)
昨年末、二つの調査結果が発表された。一つは日本医療労働組合連合会によるもの。介護・福祉施設で働く職員に「現在の人員体制で利用者に十分なサービスを行えているか」と聞いたところ「不十分」「やや不十分」が計82・2%と9割近くに達した。もう一つは民間信用調査機関(東京商工リサーチ)のまとめ。訪問介護事業者の倒産件数は1~11月に85件となり、通年の過去最多を更新した。両調査は介護事業の厳しい実態を浮き彫りにしている。高齢者が長年住み慣れた地域や自宅で過ごす。可能とするための介護保険サービスには訪問介護だけでなく通所介護もある。奄美の事業所が展開するデイサービスやデイケアから見え始めた新たな「介護のカタチ」を紹介する。事業継続のヒントになるかもしれない。介護(介助)する側、してもらう側「双方にとって楽」を目指す取り組みも動き出している。
奄美市名瀬長浜町にある奄美医療生活協同組合が運営する奄美中央病院。現在の場所に新築移転したのが2011年。病院建物の1階に通所リハビリ(リハビリテーション)を開設しており、ここで行われている介護保険サービスがデイケアだ。名称が似ているデイケアとデイサービス。送迎・レクリエーション・食事・入浴は共通するが、デイケアでは日常生活の自立支援を含めて通所リハが行われている。名瀬地区の場合、同病院のほか、介護老人保健施設「虹の丘」で、他に開業医でデイケアを展開している所もある。
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中央病院の通所は月曜から土曜日まで受け入れており、1日平均20人前後が利用。要介護1~5が約8割、要支援1~2が約2割で、「最近は重症の方が増えており、要介護4、5の方が全体の約25%を占める。全体的に見ても何らかの介助が必要な方々が増えている」。介護福祉士主任の吉田悦司さん(55)は話す。増加要因は何だろう。リハビリテーション科副技師長の喜島勉さん(50)=作業療法士=は「高齢化率が高い中で長生きされている方も多く、受け入れが増えると同時に徐々に介護度が上がってきている」、吉田さんは「自分で立ったり座ったりすることができない寝たきりの方、食事も自分でとることができず経管栄養(チューブを使って胃や腸に直接栄養補給)の方への介助も必要となっている」と説明する。
こうした状況を受けて進めるデイケア。吉田さんによると、多様な生活課題に対して個々に必要なリハビリプログラムのほか、集団運動、生活行為向上プログラム、認知症予防、社会参加支援を組み合わせて提供している。さらに「枠に限りがあるが短時間でもリハビリをしたいという方も受け入れている」。通常の利用は半日(午前中のみ)と1日(午後3時50分まで)。これに加えて1時間のみが短時間通所リハビリだ。
理学療法士主任の正野夢大さん(39)は社会参加支援についてこう説明する。「脳血管障害(脳卒中)の利用者様の中には再び自動車運転をしたいという希望がある。必要な評価を行い、自動車運転再開の支援を行っている。就労を希望する方もおり、実現に向けたリハビリ(身体機能回復)が社会参加につなげるプログラム」。こうしたさまざまなプログラムの提供にあたって対応する職員数は理学療法士2人、作業療法士同、言語聴覚士1人、介護福祉士5人、看護師3人だ。
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「特色ある取り組みとして福祉用具の活用が一番大きい」。吉田さんは強調する。活用している用具はリフト、滑りやすい素材で作られたスライディングシート、スライディングボード、フレックスボ―ド。「人力で抱え上げる動作は一切行っていない」と吉田さん。ベッド固定式のリフトのほか、どこにでも行ける床走行型、浴室での入浴で主に活用している天井にレールを設けての天井走行型と3種類のリフトを奄美中央病院では備えている。
新築移転以降、力を入れているという「ノーリフトケア」。日本ノーリフト協会によると、患者・被介護者の「押さない・ひかない・持ち上げない・運ばない」を避けることで、看護者や介護者の腰痛予防だけでなく、ケアを受ける側の褥瘡や拘縮も抑制するためのケア方法だ。力任せの介助行為を避け、利用者や患者本人の持つ力を発揮できるよう、アセスメントを基に専用の福祉用具を用いて移乗を行うことを基本としているという。
「このリフトを交互に備えることで、介助者の腰痛予防につなげている。利用者の皆さんにとっても安楽で苦痛を伴わない介助が可能となっている。筋肉が拘縮した方の緊張がとれる」(吉田さん)、「通所リハだけでなく入院病棟でもリフトを活用している。それによって退院後にデイケアにつなげる仕組みがスムーズにできている」(喜島さん)。ノーリフトケアなど通所リハに対する利用者の声では「スタッフの皆さん、とても親切に接してくれる」「1日がとても楽しい」「リハビリを受けた後、体がとても軽くなる」「通うのが楽しみ」「皆と交流できお話ができる」などが寄せられているという。
中央病院ではこうしたデイケアの受け入れだけでなく、地域への展開として訪問医療、訪問看護・介護、訪問リハビリも行っている。院内での生活から、地域に戻り自宅での生活を可能にするためには多職種連携が重要だ。
「法人内にも在宅関連の事業所が整っているのも強みかもしれない。地域医療や福祉の展開で重要な役割、求められるニーズの高さは理解している。しかし経営的な厳しさ、人材確保の難しさといった課題をどこの医療機関も抱えている。このままでは受け入れをストップせざるを得ない事態も想定されてしまう。ニーズに応え、患者さんにも不利益にならないような仕組みづくりが大事ではないか」。喜島さんは指摘する。高齢化により重症化も先行する奄美では全国以上に課題解決に向けた取り組みが急務だ。(つづく)

