~介護のカタチ~③通所サービスの現場から

わんわんネットのデイサービスと保育の事業で実現している高齢者と幼児の交流。微笑ましい光景を見ることができる(提供写真)

交流による効果
「双方に笑顔増えて貴重」

介護事業所でなぜ保育を行うようになったのだろう。中里さんは「たまたま」と笑いながらも、こう説明した。居宅介護支援に取り組むケアマネジャーが保育士の資格も持っていたことから、開所当時、保育施設不足で入所できない待機児童問題が奄美市でも表面化していたタイミングもあり手を挙げたという。また、自らの事業所(わんわんネット)で働く職員の子どもを預かる場にもなると考えた。

「建物の2階はかなり広い。当時、母親が一人で住んでおり、ここだったら保育事業もできると。近くにはベテラン保育士もおり、その協力もあって保育業界に入り込みやすかった。最初から二つをやろうとしていたのではなく、たまたま条件がそろった」
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 デイサービスと保育の同じ建物内での展開。高齢者と幼児の交流は共に行う年間行事で取り入れられている。初夏の爽やかな気候に誘われるように屋外でしている5月の浜下れ、夏祭り、クリスマスの飾り付け、自治会も加わっての餅つきなど。建物内での交流は幼児が1階のデイサービス事務所に下りて。屋外に出掛ける散歩の際に幼児が事務所を訪れ、顔を合わせることもあるそうだ。古見方地区にある小湊漁港公園まで移動しての浜下れでは、一緒に食事を楽しんだり歌や踊りをするだけでなく、高齢者がチヂン(太鼓)のたたき方を幼児に教えることも。80歳代が主の高齢者にとって幼児は孫や、ひ孫のような存在だ。

「抱っこしたりする様子は、とても微笑ましい。デイサービス利用者の皆さんは小物などの作品づくりにも取り組むが、自分のために作るだけでなく子どもたちにプレゼントとなれば、さらにモチベーションが上がるのではないか。作品の交換会といった機会も設けたい」。中里さんは語った。

二つの事業に関わる職員は「わんわんデイサービス高齢者と、いっぽいっぽ(保育施設名)園児たちとの交流について」アンケートをしている。まず子どもたちの保護者の感想を見てみよう。

保育施設選択時、デイサービスとの交流がきっかけにもなった中、触れ合いが子どもの発達に生かされていると思うかは「思う」がほとんど。「実家が島外なので祖父母と会う機会が少ない。その分デイサービスのおじいちゃん、おばあちゃんたちとの時間が年配の方と接する貴重な時間になっています。人見知りも減りました。街で知らないおじいちゃん、おばあちゃんたちにあいさつされてもちゃんと返事もできます。おばあちゃんたちがゆっくり歩いているのも見ているからか順番が待てるようになりました」「上の子はおしゃべりがだいぶ上手なので、『今度おばあちゃんたちとお祭りするんだよ』『おばあちゃんたちのお部屋に遊びに行ったよ』とたくさん話してくれます」

「おじいちゃん、おばあちゃんと触れ合う機会がなく年配の人たちと交流するのは、とても良いと思います。昔の方言だったり話し言葉が違う中で勉強にもなるし、家でも『今日はおじいちゃん、おばあちゃんと遊んだよ』と言います。笑顔が増えて人見知りもなくなっています」「いっぽいっぽに通い出して明るくなりました。笑顔が増えて年上の方にも人見知りすることなく接するようになりました。高齢者との交流は双方にとっても笑顔が増えて貴重な時間になる」

デイサービス利用の高齢者の方はどうだろう。「子どもたちとの交流は元気になる?」という設問に対し、「元気になる」との回答が圧倒的に多いが、少数ながら「どちらともいえない」も。「元気にならない」との回答はゼロだった。

子どもたちとの交流についての意見では「水曜日(通う曜日)が行事にあたることがないので、交流といってもお散歩やお出掛けの時にあいさつするぐらい。曜日も考慮してほしい。子どもたちと接するのはいい思い出。子どもは宝」「子どもが来ると楽しいことばかり。いつも一人だから楽しいことはないよ」「最初は握手もしなかった子が握手をするようになったりと、成長しているのを見るのも楽しい」「笑顔を見たり、手に触れたりすることで元気がもらえます」「孫、ひ孫みたいな感じで、泣いている姿すら楽しいと思う」「元気な子どもたちを見て若くなるような気がする」など。好意的な意見がほとんどだ。核家族化によって祖父母、両親、子どもの三世代が共に暮らすことが珍しくなっている中、高齢者と幼児の交流は「笑顔」「元気」といった効果を生み出していると言えそうだ。
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 他のデイサービスでは見られない特色ある取り組み。中里さんは「二つの事業を継続していく上でも、もっとPRしていきたい」と語ると同時に、介護事業の経営環境について「国の施策によって職員の処遇改善は図られており、給料等に反映している。一方で経営の部分は厳しい。介護報酬は減算方式。利用がないと収入は増えない。利用者の健康状態、また冬場は利用率が低下するなど時期的な事情もある。利用者が減ってしまうと事業所としての収入は減収となってしまうが、職員を雇用していくためにも報酬を維持しなければならず他の支出の抑制などで工面している」と話す。

物価高の影響も大きいという。「食料品の価格高騰はデイサービスの食費を直撃しており、送迎車両の燃料費上昇も負担が大きい。ますますやり繰りが大変になっている。高齢者の皆さんは年金暮らしだけに、介護業界は価格転嫁がなかなかできない」と中里さん。一つの事業所だけでは人材の確保を含めて経営の維持に限界が見えてくる状態も想定されることから、持続可能な介護サービスの提供へ複数の事業所同士で協力し合う方策が検討されつつある。(つづく)