居場所づくり㊤ フリースクール・デジタル創作

3Dモデリング、3Dプリンターなどのデジタル機器を使い子どもたちが創作した作品(空港や船舶の再現、ゲームキャラクターなど)を案内するNPO法人代表理事の林花穂さん

サポートする場所、人を実践

 「世間には誤解がないだろうか。まだまだ学校に行くのが当たり前という雰囲気が残っている。本当にそうだろうか。大人自身が学校に行けない子どもたちを見つめ直してほしい」「子どもたちは好きで休んでいない。いろんな苦しいことを抱えて動けなくなっている。そこは分かってもらいたい。決して甘えているわけではない。自宅で寝ながら過ごす、ゲームをする、動画を見る…それは今のつらさから逃げたいという行動の表れ。心の底から休めているわけではないことを理解していただきたい」「何よりも大事なのは子どもの『笑顔』と『命』。取り戻す、守るためには何が大事だろう。元通り学校に行く、一生懸命勉強させることでもなく、その子の生きている瞬間を大事にしたい。そのために親子に寄り添いサポートしていきたい」。奄美市名瀬のNPO法人フリースクールMINE(マイン)代表理事の林花穂さん(51)は語った。

 ■親立

 林さん自身も当事者だ。2人の子どもが小学生と中学生の頃、「しんどくなって」学校に行けなくなったという。「私自身、安心してサポートしてもらったという経験が少なかった。そんな中で当時、SSW(スクールソーシャルワーカー)だった先生がいて、とても相性が良く、出会えたのが幸いした。周囲はどうだろう。サポートがない、出会えない保護者や子どもが存在する。孤独を感じている。サポートする場所、人が必要なのに」。そんな歯がゆさが起点となり、実践して見せないと周囲の理解が広がらないという気持ちが高まった。

 2014年、SSWが親の会(不登校の子どもがいる保護者で構成)を立ち上げた。毎月の定例会を重ね、21年6月に子どもたちが通うフリースクールを設立。「元々が親の会からのスタート。不登校の子どもを抱える親の集まりであり、10年ぐらい活動後、メンバーの皆さんにお願いして立ち上げた。親立のフリースクール」。林さんは説明する。

 フリースクールとして週1回の学びの場を提供してきたが、23年度からフリースクールで培った子ども支援の知見を生かす形で新たにデジタルテクノロジー活用をベースにした第3の子どもの居場所を開設(23年8月から準備を始め正式には24年3月開所)。当初はフリースクールMINEを名瀬伊津部勝(古民家改修)で、デジタルベースMINEを名瀬伊津部町のビル1階で行ってきたが、現在はいずれも伊津部町のビルで開所している。

 ■利用

 二つの活動が一緒になったのが23年。「現在の場所に移動してからフリースクール活動が大々的に知られるようになった」と林さん。市教育委員会との協議により活動内容が「出席扱い」と判断されるようになり、市教委認定のフリースクールとして正式に決定したのが24年度からだ。

 市内の子どもたちが利用しているが、登録定員は14人。スタッフの数は5人(林さんを含めてで、内訳は常勤2人・非常勤同・事務1人)。登録14人でも一日あたり平均8~10人の利用で、「スタッフの数からもちょうどいい」と林さん。昨年夏から継続的に通える子どもが増えているという。利用は、「学校が開いている時間に準じて」となっていることから夏休みなどは学校と同様に休みとなる。日曜・祝日のほか、土曜に開放している関係で月曜も休み。火・水・木曜は午前10時から午後3時までだ。

 放課後時間帯の利用となるデジタル活動の方は午後3時から6時までで、土曜は午後1時から6時まで受け入れている。デジタルの方は奄美市名瀬地区だけでなく笠利地区、隣り町の龍郷町からの利用もある。対象としているのは10~18歳で、主に小学5~6年生、中学1~2年生が多いが、中学生になると部活動の関係で来られない子どもが増えるという。10歳以上としているのはパソコンなど電子機器を扱える年齢を考慮して。

 ところでMINEにはどんな意味を込めたのだろう。林さんによると、まず子どもたちに好まれているゲーム名(マイクロソフト社)があり、「自由にいろんなことができるゲームにちなみ、自由にいろんなことができる場所にしたい」、「英語で私のという意味がある。私の居場所と思ってほしい」、「掘るという意味もあり、才能を掘り起こす場所にしたい」。幾つかの意味を込めたMINE。フリースクール・デジタルの二つの事業は、交流と体験活動ができる子どもたちの居場所を創出している。

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 昨年11月に公表された2024年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸問題に関する調査結果によると、全国的に小・中学校での不登校児童生徒数が年々増加傾向にある。奄美市も同様で、今年度第1回市総合教育会議(昨年11月19日開催)では、今年度の不登校数状況は中学校で減少しているものの、小学校の高学年で増加傾向にあることが報告された。そんな子どもたちと保護者のサポートの必要性、デジタル機器活用による可能性の広がりを開設された居場所から伝える。