2日間・昼夜4回公演で感動させた『島口ミュージカル結―MUSUBI―卒業公演2025』=7日、天城町防災センター
【徳之島】徳之島の小中高校生らでつくる「結(ゆい)シアター手舞」(前田美香登会長、団員40人)の『島口ミュージカル結―MUSUBI―卒業公演2025』が7、8日の両日、天城町防災センターで昼夜計4回上演された。西郷隆盛と島民の交流を描き、島口や島唄などの伝統文化も織り交ぜた舞台で、延べ約950人の観客を魅了した。
結シアター手舞は、2015年「国民文化祭かごしま」に参加した天城町内の中高生らが「一度きりで終わらせたくない」との熱意から活動を継続したのが始まり。現在は徳之島3町の小学5年から高校3年までが参加し、音楽や演技はプロの指導も受けながら先輩から後輩へと受け継がれている。高校3年生を送り出す卒業公演は今回で10回目を迎えた。
脚本・演出は藏當慎也氏。舞台は1862(文久2)年の徳之島。薩摩藩から再遠島処分となった西郷と、彼を師と慕い京都まで同行して〝客死〟した同島の青年・琉仲祐(のち西郷が「徳嶋(とくのしま)仲祐」と命名)の志を軸に物語が展開する。
伝説の妖怪「ケンムン」や陽気な島民との交流、大島から訪れた愛加那母子との再会、島唄「行きゅんにゃ加那」にのせた別れの場面など、笑いと涙が交錯する約2時間半の舞台。25年度民謡民舞全国大会「成年の部」で優勝し、中学生時代に続く2度目の日本一(国土交通・厚生労働両大臣賞)に輝いた峰岡歩嬉さん(18)=徳之島高校3年=らを交えた生演奏も加わり、勇壮な舞踏とともに観客を引き込んだ。
また、姉妹団体として5年前から交流する南大隅町の「南蛮フラッグ」の団員10人も友情出演し、ダンスで舞台を盛り上げた。
7日昼の初回公演カーテンコールでは、西郷役の梅園侑真さん(樟南二高3年)が「これまでは送り出す側として立っていた舞台だが、今回は卒業する側。緊張もあったが、皆さまのおかげで最後まで演じることができた」と感謝。仲祐役の豊忠真さん(北中2年)は「大役で台本を覚えるのも大変だったが、指導のおかげでここまでこられた。卒業する頃には完璧なパフォーマンスを見せたい」と後輩の意気込みも示した。
前田会長(57)は「10年間続けられたのは地域の力。子どもたちにとっては〝第三の居場所〟のような存在で、入団時と卒業時では別人のように礼儀正しく成長する。少子化の悩み(団員確保)はあるが、いつでも帰ってこられる場所として守っていきたい」と話した。
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応援・激励に駆けつけた俳優の池田恵理さん=8日、天城町防災センター
卒業公演の会場には、昨年9月に徳之島で初上演された特攻隊ミュージカル「流れる雲よ」(同会場)の企画・出演者で、東京在住の俳優・池田恵理さん(32)の姿もあった。池田さんはスタッフとして公演を支えながら、島の小中高生による舞台をプロの視線で終始見守った。
結シアターの子どもたちが特攻隊ミュージカルに出演協力してくれたことへの「恩返しの気持ち」から来島。前田会長の「卒業公演を一番見てほしい」との言葉にも背中を押され、「仕事の時間を削ってでも、この公演を見に来る価値があると感じた」と語った。
公演については、「修学旅行で稽古に参加できない子がいたり、1人で何役も兼ねたりと、プロでも厳しい状況の中でやり遂げる子どもたちのパワーに感動した」と振り返る。さらに、時代劇特有の発声や方言(島口)、重厚な物語に挑戦する姿勢を高く評価し、「プロの現場でも同じ脚本でやりたいと思わせるほど、作品の質が高かった」と称賛した。
また、「正直言って稽古段階で不安要素があっても、本番では予想を超える力を発揮する〝本番強さ〟や、予測不能なエネルギーにも驚かされた」と子どもたちの舞台力に目を見張った。
演劇の持つ教育的・地域的価値については、「授業とは違い、エンターテインメントには人の心を動かす強い力がある。島全体や島外の人にもこの活動を知ってもらいたい」と期待を寄せる。さらに「島の子どもならではの純粋さや運動神経、独特の動き(俊敏性)など、プロ側が学ぶことも多い」と話した。
結シアターの活動が10年の節目を迎えたことについては、「次の世代や目標への『始まり』として捉えてほしい」とエール。舞台を支える地域の力にも触れ、「お母さん方が手作りした衣装や小道具の質の高さに驚いた。地域の協力体制に感謝している。自分にできることがあれば、今後も協力を続けたい」と目を輝かせた。

